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[オピニオン]済州の石垣

Posted September. 15, 2003 23:39,   

秋夕(チュソク、旧暦のお盆)連休中に襲った台風14号のおびただしい威力は、現場から離れている人々の目を疑わせる。潰れた大型クレーンや吹き飛ばされたコンテナ、車が屋根の上にあり、船が陸に打ち上げられ民家を襲った様子は、まるでハリウッド映画の「ツイスター」や「スピード2」を連想させる。台風14号が12日午後、済州(チェジュ)地域を通り過ぎる時の瞬間最大風速が、1904年の気象観測以来最大値の秒速60mだというから、十分見当がつく。時速に換算すれば、F−1レーシングカーの疾走速度並みの216kmになる。

◆こうした荒々しい暴風にもかかわらず、済州の伝統石垣はほとんど被害を受けなかったというから、今更ながら先祖の知恵に驚かされる。津波が押し寄せた城山浦(ソンサンポ)など海側の石垣は一部崩れ落ちたところがあるが、山や野原の石垣はこれといった被害を受けていないという。済州の山や野原、海岸に見られる、石を大まかに積んでいるような石垣だが、石と石の間が空いていて、コール・タールを塗らない「風のリズムに乗る石垣」として有名だ。春になると、満開した菜の花と一体となって、済州の光景を一層輝かせるてくれるこの石垣の絶妙の構造力学には、外国の有名建築家も舌を撒くぐらいだ。

◆済州の石垣はその用途が一つや二つでない。荒々しい風から家屋を保護し、他人の畑と自分の畑の境界を区分してくれる。畑に石垣ができたのは、境目がなくて勢道家らが力の無い人々の農地を併呑することを防ぐためだった。以後、土地の略奪、紛争などの弊害がなくなり、牛馬の侵入や風害まで防止できるようになったという。墓の周りの石垣はこの世とあの世の境界でもある。畑の真ん中に墓を作って、墓の周りの畑で作物を育ててきた済州の人々は、長年の自然災害や苦難の歴史の中で、生と死を乗り越える知恵を早くから身に付けていたわけだ。

◆済州の石垣は、穴がぽつぽつとあいている玄武岩を一重に積んでいるため風通しがよく、全体的に曲がっているため、風に直接当らない。そのおかげで、コンクリートで水の漏れるすき間もないほど丈夫に作られた垣よりはるかに效果的に、済州の荒々しい風に耐える。木は強い風に立ち向かって、根こそぎにされたりするが、草は一時首を下げるだけで、風が弱まると再び立ち上がるのと同じ理屈だ。強いことに勝つのは柔らかいことだという武道の教えや、水が清すぎると魚が生きられないという「菜根譚」の知恵もこれと無関係ではないだろう。史上最強の暴風にも崩れない済州石垣が、葛藤と対立の韓国社会に投げ掛けるメッセージは何だろうか。

呉明哲(オ・ミョンチョル)論説委員 oscar@donga.com