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[オピニオン]ケリーの悲劇

Posted July. 21, 2003 22:14,   

今年5月22日、英国ロンドンのビクトリアン・チャーリングクロスホテル。物静かで真面目、かつ内気にみえる男が、その正反対の特徴を全て備えているような男と向かい合って座っていた。陽気な男は、英国BBC放送国防担当記者のアンドリュー・ギリガン。大量破壊兵器(WMD)を取り除くという名目で英国をイラク参戦に導いた英国政府が、果たして正当であったのかについて取材しているところだった。イラクのWMD存在について、デービッド・ケリー博士より詳しい専門家はいない。湾岸戦争以降、7年間36回もイラクを往復しながら、国連兵器査察団の中核的な役割を果たした人物である。彼らのうち、誰も2ヵ月後の悲劇を予測していた者はいなかった、と英国のガーディアン誌は伝えた。

◆科学と国防、激しい情報戦に生涯を捧げたケリー博士が、冷たい遺体となって帰ってきた。問題は「総理室が発表したイラクのWMD関連文書が、さらにもっともらしく(sexier)改ざんされた」というギリガン記者の5月29日付けの報道が発端となった。6月1日、ギリガン記者は「取材ソースによると、総理広報首席のエラステア・ケンベルが『イラクは45分のうちにWMDを撃つことができる』という内容を盛込むように操作を加えた」と主張した。以後、激しい真実ゲームが繰り広げられた。ケンベル首席は否認した反面、国防省が取材ソースであると発表したケリー博士は聴聞会に召喚された。聴聞会で、議員たちはケリー博士を「くず」とまで卑下した。

◆英国警察は、ケリー博士が自殺したとしているが、なぜ死を選んだかは誰も知らない。ジャーナリストの友人に「BBC放送記者が私の話を誤解したようだ」と心配していたとされるケリー博士は、最初の聴聞会で「私が唯一の取材ソースだとは思わない」としており、2回目の聴聞会では「45分」と「操作」報道は、推論から持ち出されたようだとして、一歩引き下がった。BBCは、ケリー博士の死に哀悼の意を表明しながらも、彼の話を間違って伝えてはいないことを明確にした。何が真実で、何が偽りなのか。死者はなにも語らずである。

◆今英国は、政治的パワーゲームと放送の倫理性、そして真実と道徳の問題をめぐり、激しい攻防が展開されている。「手に血をつけた」ブレアー首相のみならず、国防省、国会議員、BBCに至るまで、各々の利益のみを追従する醜さを露にしたとの批判が激しい。しかし、これより重要なことは、果たしてイラクにWMDがあるのか否かであり、さらに重要なことは、数多くの犠牲者を出して「解放」されたイラクが今どうなっているのかである。死の直前、知人に送った電子メールの中でケリー博士は「仕事が無事終れば、バグダッドに戻って本来の仕事に取組みたい」としている。イラクの戦争はまだ終っていない。

金順徳(キム・スンドク)論説委員 yuri@donga.com