英医学協会誌BMJの最新号が報じたところによると、マラソンなど持久力を必要とする運動の途中、過度な水分を取ると低ナトリウム性の脳障害で重態に陥ったり、甚だしくは死亡する可能性もある。
南アフリカ・ケープタウン大学の運動生理学者、ティモシー・デイビッド・ノアキス博士はBMJに掲載した論文で、血液にナトリウムが多すぎたり少なすぎたりすると、脳が膨れあがる低ナトリウム性の脳障害になる可能性があり、軍人や女子スポーツ選手が最もぜい弱なグループだと指摘した。
この症状は、02年にボストンマラソンに出場したある女性がスタート前とレース途中に多量のスポーツドリンクを飲んだ後、倒れて死亡した事件を契機に、医学界で注目されてきた。
論文によると、運動の途中に「飲んでもいい最大の量」、すなわち1時間あたり600ミリリットルのスポーツドリンクを飲まなければならないというスポーツドリンクメーカーらの勧告は、「情けない科学の逸脱」だという。こうした指針は、体格条件、性別、スポーツの種類、気象状況とは関係なく、すべての人々が体内に同じ量の水分を維持すべきだという、誤った根拠から出されたものだというのがノアキス博士の指摘だ。博士は「最も良い方法は、各個人がノドが渇いた程度に応じて水分を取ることだ」と勧めている。