アラブ社会では一夫多妻、いとこ同士の結婚など、他の文明社会ではタブー視する結婚風習が残っている。いとこの妹に対する親戚の兄の権利は絶対的で、その兄に当たる男が結婚をあきらめない限り従妹は他の人との結婚が不可能なほどだ。結婚前の男女が徹底して隔離されて成長するアラブ社会で、いとこの兄妹は唯一交際できる異性だ。いとこ同士の結婚は、親戚の連帯を強め、持参金の負担を軽くさせる。家族の意思に押されて心にもない従妹と結婚した男性は、一夫多妻制度によって二番目の夫人を娶ることで補償される。
◆歴史に登場する偉人が20代前の祖先だと家柄を自慢する人もいるが、その祖先と20代後の子孫はDNA構造からして他人に等しい。世代ごとに他所から新婦が入ると毎回異種遺伝子が50%ずつ混じり、20代後の子孫が祖先と共有する遺伝子は2の20乗分の1で、0%に近い。古代国家では、神聖な王族の血統がこのように平凡な血と混じることを防ぐために近親結婚を奨励した。だが、互いに遺伝子構成が似ている近親同士が結婚した場合、両親の代に隠されていた致命的な遺伝病がその子孫に現れる可能性が雑種に比べて非常に大きくなる。遺伝学的な欠陥が認められたことで、近親婚の風習はアラブ圏を除く他の世界では消え去った。
◆植物も一つの個体の中にある雌しべに同じ固体の花粉が触れることを避けている。松は雄花が雌花より下にあって、一本の木にある花粉がすぐ下の雌花に触れることを防ぎ、トウモロコシは時間差を置いて、近親交配を防ぐ。近親結婚の禁止範囲は文明圏によって違うが、最近まで世界でもっとも広範囲にわたって近親結婚を禁止していた国が韓国だ。民法上同じ姓でその家系の始祖の出身地である本貫が同じ「同姓同本」の禁婚条項が、憲法裁判所の憲法不一致の決定を受けて、8寸(曾祖父の兄弟の曾孫)以内の禁婚に変わったのがわずか6年前のことだ。だが、新羅、高麗時代には近親結婚が盛んで、高麗4代目の光宗(位949〜975)は腹違いの妹を后に迎えていた。
◆イラク情報機関長を務めたバルジャン・タクリティは兄のサダム・フセインに忠誠を誓い、フセインの長男ウダイと娘を結婚させて、兄弟が姻戚となった。同姓同本の結婚まで禁止していた韓国の基準で、アラブ世界の結婚風習についてあれこれ言うことではない。米軍に逮捕されたタクリティは今、「私はフセインに抵抗した」と娘の舅でもある兄を否定するのにあくせくしているという。近親結婚は遺伝的な欠陥だけでなく、政治的にも危険性のある結婚制度のようだ。
黄鎬澤(ファン・ホテク)論説委員
hthwang@donga.com






