米国のクリントン前大統領は就任直後、「ポール・ルードマン・トラスト」という会社と白紙委任信託(ブラインド・トラスト、運用銘柄を指定しない信託)を結んで、保有していた株式と債券をすべて預けた。同社はクリントン前大統領の在任期間中、自らの判断によって株式と債券を売り買いをし運用した。その過程で会社は、クリントン前大統領に売買の許可を得たり事後通告をしたりしてはいけない。半期ごとに資産の状態を要約した報告書を提出はしても、保有株や所得の出所について知らせることはできない。クリントン前大統領が職務を遂行する上で、自身の利害関係に影響を受ける可能性を防ぐための措置だった。
◆米国では高位公職者になると、身の回りを整理する理由は、利害衝突(Conflict of Interests)条項が厳しく適用されるからだ。利害衝突とは、職務遂行の上で、判断と自身の利害が一致しない場合を指す。この概念は、政府の高官だけでなく、上院下院を含め社会全般に広く適用される。いわゆる、ウォール街のアナリストが特定会社に有利な報告書を提出して、過剰オーダーを出す行為も同条項に反するとして法に触れる。「政府倫理法」「倫理改革法」「上院倫理規定」「下院倫理規定」は全て、利害衝突の条項を詳細に明記している。米国資本主義の腐敗の可能性を遮断する仕掛けの一つというわけだ。
◆反面、韓国では利害衝突に対する理解がまだ十分ではない。国会議員が利害関係が絡んだ常任委員会で活動することも頻繁で、それを問題とは考えていない。まして、自身が事実上所有している会社と競争関係にある会社に圧力を加えて、利権をほしいままにする事件まで起きたりした。最近、市民団体が政府の高位公務員に保有株式を売却するよう促したのは、利害衝突の可能性を遮断するよう要請したわけだ。個人的な利益を放棄するか、職務を放棄するか、ニ者択一を迫られる状況に追い込まれると、人間誰しも心が揺れ動く。
◆これについて、情報通信部の陳大済(チン・デジェ)長官は、「三星(サムスン)電子の株式を取得したのは、失権株の買い入れや有償増資の方法で保有したものだ」として、市民団体の要求を拒んだ。三星電子のデジタル・メディア部門の総括社長まで務めた陳長官が三星電子の株式を多く保有しているのは当然であり、法的になんら問題はない。だが、陳長官の説明は問題の核心をついたものではなかった。問題は、陳長官がどうやってその株式を保有するようになったのかではなく、今後の政策決定に影響を及ぼす「可能性」がある、ということだ。陳長官は、「株式保有とは関係なしに、透明かつ公正に政策を執行する」と語ったが、米国の公職者は、非良心的なためにそんな制度が設けられたわけではない。国民は利害衝突の可能性を全て断ち切った長官を求めているのだ。
金尚永(キム・サンヨン)論説委員 youngkim@donga.com






