
昨年、海外映画に関心の高い人なら、一度は賛否両論を耳にしたはずの作品がある。興行的には振るわなかったが、批評家からは高い評価を受けた、ポール・トーマス・アンダーソン監督の「ワン・バトル・アフター・アナザー」だ。22日(現地時間)に発表された米アカデミー賞の最終候補で、13部門にノミネートされた同作。なぜ、評価と興行成績はここまで食い違ったのか。
本作は、製作費だけで最低1億3000万ドル(約1880億ウォン)を投じた、ハリウッドでもブロックバスター級の作品だ。損益分岐点を超えるには3億ドル超の興行収入が必要だったが、世界興収は2億ドルにとどまったという。商業的には大きな損失と言える。
興行不振の主因として挙げられるのが、アンダーソン氏の強い「作家主義的色彩」だ。「ブギー・ナイツ」(1997年)や「パンチドランク・ラブ」(2002年)で知られる芸術性の高い監督であり、本作は彼の中では比較的大衆性のある作品とされるものの、明快な娯楽性を求める観客を引きつけるには十分でなかったとの見方がある。
一方、この「割り切れなさ」こそが作品の真価だとする評価も多い。物語の骨格は「危機に陥った娘を救おうとする父親の奮闘」という王道だが、反政府団体出身のボブ・ファーガソン(レオナルド・ディカプリオ)を主人公に据え、移民差別や暴力的な抗議運動の実態を描いた。対極に位置するスティーブン・J・ロックジョー(ショーン・ペン)を通じて白人至上主義の現実も浮かび上がらせ、トランプ時代の米国社会を皮肉たっぷりに映し出している。
米映画業界誌バラエティは、「急進的な政治と文化的退廃を痛烈に風刺した作品だ」と評し、「率直な政治メッセージを宿した挑発的な一作で、今回のアカデミー賞が持つ挑発性を体現している」と書いた。
現地では「ワン・バトル・アフター・アナザー」が、今回のオスカーレースで最有力候補と見る向きも強い。授賞式の前哨戦とされる第83回ゴールデングローブ賞では、ミュージカル・コメディ部門の作品賞、監督賞、脚本賞、助演女優賞などを獲得。第31回クリティクス・チョイス・アワードでも作品賞、監督賞、脚色賞と主要部門を席巻した。
3月15日に開かれる第98回アカデミー賞で、本作は再び存在感を示すのか。ただ、対抗馬も手強い。「罪人たち」だ。米黒人史をジャンル映画として描いた点が高く評価され、16部門にノミネートされて史上最多候補の記録を打ち立てた。北米では過去15年間で最高の興行収入(約4000億ウォン)を記録した実写オリジナル映画ともなり、世界興収も3億ドルを超えた。興行成績だけを見れば「ワン・バトル・アフター・アナザー」を上回る。
キム・テオン記者 beborn@donga.com






