イラクのメディアは、最近、フランスのシラク大統領を「アル・ムナディル アル・アクバル(偉大なる闘士)」と呼んでいる。対イラク武力行使の姿勢を強める米国に対抗して、「今は武力を使う段階ではない」と反戦世論を主導しているシラク大統領に対する感謝の気持ちを、このように表しているわけだ。イラクの人々にとっては、シュレーダー独首相もやはり「勇敢な闘士」だ。これも、反戦グループの先鋒に立つドイツ首相に対するイラク国民の心境を物語っている。一方、ブッシュ米大統領は「狂人」、米国に同調するブレア英首相、ベルルスコーニ伊首相、 アスナール・スペイン首相は「悪漢」と呼ばれている。
◆イラクがフランスとドイツの指導者をおだてているのは、近く国連安全保障理事会で行われる票決のためだ。15カ国の安保理理事国は「イラクに対する武力行使を容認してほしい」という決議案を採択するかどうか票決で決めなければならない。決議案が可決するためには、9カ国以上が賛成し、このうち常任理事国5カ国(米国、英国、フランス、中国、ロシア)が拒否権を行使してはならないが、現在としては米国もイラクも勝利を確信できない状況だ。「票」を得るため、湾岸戦争で米国の味方をしたフランスとドイツに「スマイル」を見せているイラクの心境は充分理解できる。
◆国連安保理の権限は、特定国を狙った戦争を容認できるくらい絶大だ。ほかの例を見る必要もない。朝鮮戦争で国連軍の派遣が安保理の票決で決まったということを思い出せば、その権限がどれだけ大きいか分かる。政府がただ一回だけ(96〜97年)だが、安保理理事国となったことを自慢するのも、世界情勢を左右する安保理の位置づけを考えると理解することができる。当時、韓国政府は総力をあげて外交を繰り広げ、スリランカを辞退させて、アジアに当てられた非常任理事国のチケットを得た。もちろん、スリランカに相応の外交的対価を払わなければならなかったが。
◆われわれが、今回の安保理票決を傍観してはならないもう一つの理由がある。国際原子力機関(IAEA)から安保理に付託された北朝鮮核問題があるからだ。安保理が決議案の採択を試みれば、われわれは理事国に対して北朝鮮と、し烈な「得票合戦」を行わなければならない。しかも、北朝鮮の核もやはり米国の主導する懸案だ。安保理理事国の賛否に対する意見が(イラク情勢と)似たような形になる可能性が高い。われわれに有利な結果を得るためには、安保理の動向を把握して適切な対応をすることが必要だ。新外交チームの奮発を期待する。
方炯南(パン・ヒョンナム)論説委員 hnbhang@donga.com






