第二次世界大戦当時、米国、英国、ソ連の首脳がイランのテヘランで会合した。ドイツ敗戦1年半前のことだった。主要議題は、フランスに第2戦線を構築する問題だった。ソ連のスターリンは北フランスへの上陸作戦が必要だと主張し、英国のチャーチルは地中海作戦を主張していた。チャーチルはフランスでの戦闘は数万人の兵士に犠牲を強いるとして反対した。すると、スターリンは「一人の人間の死は悲劇だ。数千人が死ぬとそれは統計となる」と応えた。戦死者2700万人、民間人の犠牲者2500万人。この戦争が残した残酷な記録は果たして、人類に統計以上の意味はなかったのだろうか。今でも絶えず戦争は起きているというのに。
◆テヘラン会談以降、米国のアイゼンハワー将軍が率いる連合軍は1944年6月に歴史的なノルマンディ上陸作戦を成功させ、翌年5月にドイツを敗北させた。ファシストを負かしたということに自負するのもうなずける。歴史家はこうしたことに意義を与えたりもした。だが、アイゼンハワーは次の言葉を残している。「私は戦争に生き残った人間としてではなく、戦争の残酷さと無益さと愚かさを見てきた人間として戦争を憎む」。戦争の英雄にとっても、戦争は誰がなぜ起こしたのか、誰が勝利したのかとは別に、くだらないことに見えたようだ。
◆米国はイラクに対して、「平和のための戦争」をしようとしている。だが、世界の多くの人々は米国が掲げている名分をその通りに信じてはいない。15日に世界数十カ国で1000万人以上の人々が反戦デモ行進に参加した。60年代のベトナム戦争反対のデモ以来最大規模だという。米同時多発テロがあったニューヨークでもおよそ20万人もの人がデモ隊に参加したとか。なのにブッシュ米大統領はそれにびくともしない様子だ。「ブッシュ大統領はこのようなデモが米国の由緒深い伝統であり民主主義の長所だと信じている」とホワイトハウスのスポークスマンは伝えた。米国民の多数はこの戦争を支持していると信じているためか。
◆ベトナム戦争は米国が主導した間違った戦争だった。だが、当時は世界が大きく東西両陣営に分かれていた。当然反戦運動には相手陣営の首長であるソ連の息がかかっている、という疑惑もあった。世界各国の反戦デモの背景にイラクがあると信じている人がいるだろうか。ベトナム戦争当時、米軍兵士のヘルメットに次のような言葉が書かれていた。「私たちは望まない。資格のない者に連れられて、不快な者のために無駄なことをしている」。反戦雰囲気にもかかわらず、戦争が起きた場合、米軍兵士は今回はどのような反応を見せるのだろうか。
文明豪(ムン・ミョンホ)論説委員 munmh97@donga.com






