
フランス映画「He Loves Me(日本題名:愛してる、愛してない)」は、ロードショーの前に何とも批評しにくい映画だ。
中盤に話の流れを完全に巻き返す反転があるからだ。広報資料では「ロマンチック・ドラマ」と紹介されているが、それを真に受けた観客は「裏切り」を覚悟しなければならない。むしろ、この映画は、スリラーに近い雰囲気であり、精巧に構成された二つのバージョンの物語を綿密に対照しながら見ると、格段に面白い。
美術学校の学生アンジェリック(オドレー・トトゥ)は心臓専門外科医ロイ(サミュエル・ル・ビアン)を愛しているが、ロイは既婚者だ。アンジェリックは、恋に落ちた幸せを満喫しながらも、妊娠したロイの奥さんを見る度に嫉妬に駆られる。ロイに離婚する気が無いことを確認したアンジェリックは、自殺を計り、映画ははじめに戻る。今度は、ロイの立場で、アンジェリックが経験した事件が繰り広げられる。
中盤以降、同じ事実が観点によってこんなに変わるものかという感嘆とともに、映画は一層面白みを増す。アンジェリックの立場で展開される前半では、ロイはわがままな既婚者であり、アンジェリックは寂しくてつらい恋をする可憐な女性として描かれる。
しかし、ロイの立場で展開される後半では、同じ事実の意味と原因が全く違って解釈される。アンジェリックは恋のつらさに悩む純真な乙女ではなく、ロイの人生は思いがけない出会いと不倫のためにうまくいかない。秘密がすべて明らかになった後、最後に浮かぶ「私の狂った恋に理性はささやく。辛抱強く愛をつかめ!」という字幕は、狂人の残酷なささやきのように聞こえる。
暗い感じのストーリーだが、この映画が最後まで軽快な雰囲気を維持できるのは、主演女優オドレー・トトゥのお陰だ。あのような女性が強烈な愛情を注いでくれるなら、多少の苦しみぐらいは耐えられるのではないかと思えるほど可愛くてキュートな姿は、観客の目を画面に釘付けにする。26歳の若い女性監督、ラティティカ・コロムバニの初長編。15歳以上観覧可。原題「A La FoLie…pas du Tout」14日封切り。
金熹暻 susanna@donga.com






