
(20)アフリカよりもっとアフリカのような…
75年のある日。アフリカ・ケニアの首都ナイロビにいくつかの国のリーダーが集まって、零細中立国に残る案を論議していた。当時フィリピン大統領であったマルコス氏も参加していたが、ちょうど会議日程の途中に彼が誕生日を迎えた。これを聞いたケニアの大統領は、誕生日のプレゼントをしたいが、何がいいかを聞いた。これに対し、マルコス大統領は突拍子もなくアフリカの動物がほしいと言ったという。確認することのできない話だが、今も伝説のようにこうして伝えられている。
過程はどうであれ、現在フィリピンには、当時ケニアの大統領が送ったアフリカの動物が、堂々と生きている。ケニアの巨大なサファリーパークのマサイ・マラからつかまえてきたキリン、シマウマ、インパラ、ウォーターバークなど、アフリカ草原で走り回らなければならない野生動物が、フィリピンのある島で29年間生きている。
その島は、カラウィット島。位置はパラワン島の北端であるブスアンガ島の北方、クラブパラダイスがあるディマクヤ島からバンカー船で、1時間の距離だ。まるで映画『ジュラシック・パーク』を連想させるこの島を尋ねて、ディマクヤ島をバンカー船で発った。カラウィット島は、ディマクヤ島と違って周辺が干潟だった。鳥たちが貝を捕る干潟に上陸し、パームの生い茂ったジャングルに立ち入った。
小川を渡ると、森の道に立っている8トンのトラックが見えた。貨物室に一字型の座席を設置して改造したサファリーツアー用のトラックだった。森を抜け出ると丘が見えた。一番先に見たのがシカ類。人を警戒するシカの群れは、トラックが近づくと遠くに逃げた。丘を越えると草原が現われた。シマウマが見えた。
この世の中の動物のうち、一番派手な模様をしているというシマウマ。子馬を含め10頭余りが群れをなして、木陰の下で休んでいた。シマウマは、アフリカのサファリーパークでも見るのは難しい動物。
次に見たのはキリン。1匹が寂しそうに森をぶらついていた。キリンもアフリカのサファリーパークで、珍しい動物の一つ。30年近くこの島で暮しながら適応したが、警戒心だけは昔のままか、近づくと長い足でつかつか走って逃げた。
アジアにはたった一つだけのこの「ゲーム・リザーブ」(Game Reserve・アフリカの野生動物を自然状態で観察するサファリーパークを呼ぶ用語)の公式名称は、 「カラウィットゲーム・リザーブ&ワイルドライフ・サンクチュアリ」。島の真ん中の管理事務所へ行ったら、これまでどう適応してきたのかを見せてくれる案内板がかかっていた。亜熱帯のアフリカ草原で棲息する動物が熱帯のフィリピン島で適応するのは容易ではないことだ。乾期と雨期で明確に分けられる自然条件に大部分は適応したが、ガゼルとトピは失敗して1羽も残らなかった。最初8種の104匹が移してきたが、今は6種の502匹。
クラブパラダイスに帰る船に乗るために行った海辺の砂浜で、大きな動物の足跡を見つけた。 キリンだった。 パームの生い茂った優雅な海辺を歩いているはずの長い首に、長い足のキリンの姿。ジュラシック・パークと同様の興味をそそる風景だ。
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