人類が狩猟生活をしていた頃は、狩りに成功すればお腹いっぱいに食べることができ、そうでなければ飢えるほかすべがなかった。科学者らは、原始時代の人類がこのように不規則な食事をとる過程で、人体に脂肪を貯めておく機能が発達したのだとしている。獲物をたくさん食べて脂肪を貯えた人は、狩りの対象が姿を消した後も生き残り、後世に脂肪蓄積の身体機能を残すことができた。いつ頃になったら次の食事ができるのか見込みが立たなかった時代には、生存という観点から、脂肪の蓄積(肥満)は適者生存のための強みであったのだ。ところが、わずか数歩のところにある冷蔵庫の扉を開ければ、おいしい食べ物がいっぱいといった時代になってから、いざ問題が発生したのである。
▲ 食欲は性欲とともに人間の最も基本的な欲望である。しかし、飢えだけが食べることの唯一の理由ではない。ストレス、けん怠、或いは食べること自体を楽しむために食べることもある。世界保健機関(WHO)は、世界的に20億人が肥満であると推定している。食べ物が安くて豊富な米国は、アルコール、麻薬、過食症など、3大中毒者の国と皮肉られることもある。米国の成人の64.5%、6〜19歳の青少年の15%が肥満といわれている。肥満は、高血圧、心臓病、動脈硬化、糖尿病などの原因とされているほか、脂肪を除いたほかの栄養素不足により、各種病気にかかりやすい。WHOは、肥満を悪性の「伝染病」ととらえている。
▲ 食べる量が増え、体を動かす機会が減った生活環境が肥満の主犯である。近頃の子どもたちは以前の世代に比べ、座っている時間がはるかに長い。テレビとコンピューターの前で長い時間を過ごし、肉体を動かす遊びや働く時間は大きく減っている。両親が共働き、または片親を持つ子どもたちは、ファストフード店で砂糖の入った飲み物と高カロリーの食べ物を食べることがよくある。ハンバーガーのサイズが次第に大きくなり、スーパーサイズのハンバーガーひとつの中に、一日に必要なカロリーが全部含まれているほどだ。
米国ニューヨークのマンハッタン連邦裁判所で、8人の肥満青少年が肥満の危険性について、事前に警告を行っていないとの理由で、マクドナルドハンバーガーを相手取り損害賠償を求める訴訟を起こした。マクドナルドは、世界121カ国に3万店のレストランを持つ世界最大のファストフードのチェーン店。マクドナルドは、ポルシェ自動車に乗った人がスピード違反でチケットを切られた場合にも自動車会社が責任を負うべきかと抗弁する。ところが、喫煙による被害について警告をしなかったとの理由で、米国の煙草会社5社が天文学的な金額の賠償を行った判例があることから、ファストフード会社とて安心できる境遇ではない。個人の責任同様、企業の社会的な責任が強く求められる時代である。
黄浩澤(ファン・ホテク)論説委員 hthwang@donga.com






