
ある日の朝、眼を覚ましてみたら、突然数ヵ国語を流暢に話せるようになっていたし、ひとりで何人も相手できるくらい武術の能力も飛び抜けていた。「天からの贈り物」だと喜んでもいいが、しかし問題は自分が誰なのかを知らないということだ。新しい映画「ボーン・アイデンティティー」の主人公ジェイスン・ボーン(マット・デイモン)の悩みだ。
「ボーン・アイデンティティー」は腕前よく撮影されたアクションと追撃シーンなどで見事に組み立てられた構成、現実感あるそれぞれのキャラクターが引き立って見えるアクション映画だ。
ジェイスンは、銃に撃たれて負傷したまま海を漂流していて救出された。が、記憶そう失症にかかる。彼の持っている過去のこん跡は、銃傷と肌の中に隠されているスイス銀行の秘密金庫番号だけだ。自身の過去をたどっていたジェイスンは、米中央情報部(CIA)に追われる途中、偶然に出会ったマリー(フランカ・ボテンテ)に車に乗せてもらう。
この映画の独特なところは、観客は序盤からジェイスンの正体を知っているのに、ジェイスンだけが自分が誰なのか知らないところだ。彼は、秘密作戦を遂行していた米CIAの暗殺要員で、CIAは彼が失敗した秘密作戦を隠ぺいするため彼を殺害しようとする。
この映画の心理的な緊張は、危機的状況にぶつかると、無意識的に優れた能力を発揮し、ますます「アップグレード」していくジェイスンが、ついには「自分が誰なのか言ってくれる」人を探し出せるかを見守るところから始まる。
パリでの自動車追撃シーンなど視覚的なスリルを提供するアクション場面も粗雑でなく、マット・デイモンの演技も締まりがある。今年夏、米国で1億2000万ドルをもうけた興行作。ロバート・ラドラムの3部作小説の1部作が原作だ。監督はダグ・ライマン、原題「The Bourne Identity」。12歳以上観覧可。18日封切り。
金熹暻 susanna@donga.com






