
通り過ぎる人は必ず覗いてみる。それなりの訳があった。一柱門(イルチュムン、お寺の第一門)の外だからお寺ではないはずだが、韓国伝統屋敷の塀の風貌からして並大抵の屋敷にはみえないからだ。大興寺(デフンサ)の付属施設くらいだろうと片付けてしまう様子だ。そうしては、のみ込む息でつぶやく。「こんなところで一晩泊まってみたいな…」と。
大興寺の森のトンネルの端、彼岸(ピアン)橋の右側にある見事な韓国伝統屋敷。門の扁額にはこう書いてある。「遊仙(ユソン)館」。驚いてはならない。ここは旅館だったのだ。全国でたった一つ、山中寺院の塀の下に据えた山中の伝統屋敷旅館だ。
毎日未明3時。万物を覚ますお寺の道場釈と法鼓、雲版、木魚、大鐘など明け方の礼拝の始まりを告げる4つの儀物の響きが余すことなく聞こえる。雰囲気はお寺の客間だが、構造は大屋敷だ。内部の施設は現代式の伝統家屋。庭には花の庭園が、裏庭には甕の置き台がある。大興寺の法堂前を流れる渓流は塀沿いで走る。一柱門に上がる道は旅館の門前を通る。
部屋の中から格子戸を開けると、きれいに清掃された庭が広がり、茂った裏庭の光景が目に留まる。400年前に礎を築いた古屋敷のプレミアムはそんなものだった。端正に拵えられた朝食のお膳。鳥の鳴き声に流れの音、風の音を鑑賞しながら、全羅南道(チョルラナムド)特有の盛り沢山の食材を楽しむ。朝と夕方とで、こさっぱりした食事をもてなした韓国伝統の旅館そのものだ。何もかもなくなったと思っていたのに、韓国の陸続きの最南端・海南(ヘナム)の古刹、大興寺前の奥ゆかしい森の中の伝統家屋には、こんなにも見事に残っていた。陸続きの最南端、海南の名所になって余るものがある。
◆予約情報〓客室(計14室)は大きさによって3万(2人)、6万(4人)、12万ウォン(6人)。お手洗い、シャワー室は共同使用。食事は△夕食1万、1万5000ウォン△朝食は5000ウォン。自家製の5年熟成徳利イチゴ酒(2万ウォン)の味も格別。近くに駐車場有り。週末の予約は必須。急がないと寝泊りのチャンスはつかめない。主人、尹(ユン)ジェヨンさん。061−534−3692。
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