警察があらゆる暴力的な手法で弁護士の正当な職務執行を妨害することは、いかなる理由からも許されないことだ。法治主義の根幹を否定する明白な不法行為だ。しかも事件が起こったデウ(大宇)自動車ブピョン(富平)工場の現場で警察を指揮したインチョン(仁川)・ブピョン警察署長が「政権は法より優先する」という妄言をも吐いたと言われるが、一体どの国の警察なのか驚愕せざるをえない。
我々が特にこの事件に関心を寄せているのは警察が裁判所の決定まで無視したからだ。大宇自動車の労組員や労組側代理人のパク・フン(朴勲)弁護士は裁判所の決定により労組事務室に入ろうとしたが、警察が惨たらしい暴力をもって阻止しようとしたが、これが、ことが拡大する直接的なきっかけとなった。
大宇自動車労組は会社側と警察がブピョン工場の労組事務室を封鎖すると、会社を相手取って出入り及び業務妨害禁止仮処分を申請し、裁判所はこれを受け入れ、労組員の労組事務室への出入りを妨害してはならないという決定を下した。これによってパク弁護士は9日と10日、労組事務室を封鎖していた警察に裁判所の決定を説明し、警察が出入りを妨害するのは不法な行為だと数回にわたり警告したという。
にもかかわらず、警察は聞く耳持たずで労組員の出入りを封鎖し、とうとう10日午後には労組員やパク弁護士など40人余りが警察にこん棒で殴られたり足で蹴飛ばされ負傷するという呆気に取られる事態が起こった。これは一言で公権力を執行する警察の姿とはいえない。しかもより深刻なことは不法暴力など何でもない、とでも言いたげに暴言を振りまいた一線の警察幹部の意識や行動だ。警察が自ら法秩序を否定するのは過去の軍事独裁政権でもなかったことだ。政権が法より優先するなんて、国民は何を信じるべきなのか暗澹たるばかりだ。
いくら大宇自動車の売却問題が焦眉の懸案だとしても、このように労組を押し黙らせようとしてはならない。労組が売却交渉の最大のネックだという判断から政府と会社が労組の存在さえ否定しようとすれば、事態は悪化するばかりだ。
我々は警察の今回の不法な対応が政府や会社の労組に対する考え方を表わしているかもしれないという点で大変憂慮せざるをえない。大宇自動車の回生は結局労使の協力が鍵を握っているというのが我々の判断だ。そのような雰囲気作りのためにも当局は今回の不法事態の真相を究明し、関連者や責任者を厳しく咎めるべきだ。






