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いま「コロナ29」に備えなければならない理由

いま「コロナ29」に備えなければならない理由

Posted April. 01, 2024 08:48,   

Updated April. 01, 2024 08:48

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ネットフリックスの空想科学(SF)ドラマ「三体」には、太陽が3つの文明が出てくる。予測できない公転周期のため、気候が穏やかな恒世と地獄のような乱世が不規則に繰り返される。乱世には、3つの太陽が同時に浮かんでいて大地が火の海になったり、太陽とあまりにも遠くなって海が凍りつくこともある。厳しい乱世に耐える方法はただ一つ、恒世の時に備えておくことだ。

感染症の大流行(パンデミック)は、乱世に似ている。いつ来るかわからない。壊滅的な被害を与える恐れがある。始まってから備えると遅い。そして最も重要なことの一つ、必ずまた来る。

世界中を襲った新型コロナウイルス感染症の危機が終息して、まもなく1年になる。今は黄金のような恒世だ。次のパンデミックは、もっと過酷かもしれない。病原体が、高齢者だけでなく乳幼児を集中的に攻撃したり、呼吸器を越えて頭脳まで浸透するかもしれない。我々は、このような恐ろしい可能性を察しながら、次のパンデミックに着実に備えているのだろうか。

ワクチンへの対応から見てみよう。政府は昨年5月、新型コロナウイルス感染症の危機終息を宣言し、「新型感染症の発生後100日以内に、メッセンジャーリボ核酸(mRNA)のワクチンを開発する」という目標を発表した。mRNAワクチンは、開発が早く、死亡予防効果の大きい「ゲームチェンジャー」だった。我が国は自ら開発する力量がなく、先行購買の競争でも負けたために、大統領が製薬会社に電話して「ワクチンをくれ」と哀願しなければならなかった。

ところが、政府と国会の対応は逆方向に進んでいる。この2年間、327億ウォンをかけて活動した国家mRNAワクチン開発事業団は、今年6月に活動を終了する。第2段階の事業予算がすべて削減されたためだ。予算審査の過程で、「新型コロナが終わっているのに、あえて支援しなければならないのか」という話が出てきたという。一方、日本は粘り強く1兆ウォンを投資した末、昨年、独自のmRNAワクチンの開発に成功した。次のパンデミックの時はどうするのか。日本に物乞いするつもりか。

次に重要なことは、「社会的距離の確保」など防疫措置の根拠法令を整備することだ。私たちは前回のパンデミックの時、自営業者と学生の権利を犠牲にして社会を守った。当事者は決定過程に参加できず、補償も微々たるものだった。新型感染症に見舞われても、ワクチン導入前まで社会的距離の確保は避けられない。それなら、費用対効果の大きい防疫措置からしなければならないが、今は営業時間の制限と登校中断などが、実際に感染者をどれほど減らしたのかの分析が皆無だ。

最後は病床だ。前回のパンデミックの時、「病床の余裕」と「医療余力」は同義語だった。政府は次の感染症に備えて、非常時に動員できる陰圧病床1700床を2022年末までに設置することにしたが、この計画は今年末へと2年遅れた。重症患者の治療能力を備えた良質の病床を確保するためだという。少し遅れるのは大丈夫だ。しかし、重症・救急患者より軽症・美容患者の治療がよりお金になる現行の医療費の構造を改めなければ、「非常病床」がまともに作動できないことを忘れてはならない

この観点から見れば、現在の医療界と政府が医学部の定員をめぐって繰り広げる力比べは贅沢に近い。膝を突き合わせて解決する難題が山積している。次の乱世に備える今、この平和の時期はいつ終わるか分からない。今この瞬間も、ウイルスは地球のどこかで次のパンデミックを狙って息を殺しているはずだが、私たちはあまりにも簡単で早く、過去の教訓を忘れたのではないか。