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ヴィーナス、マリア…すべて幻想にすぎない

ヴィーナス、マリア…すべて幻想にすぎない

Posted November. 12, 2022 08:32,   

Updated November. 12, 2022 08:32

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落ちるバラの花の間で美の女神ヴィーナスが艶やかな髪をなびかせ、海の上に浮かぶ。あざや贅肉のないまさに完璧な身体。5世紀のイタリアの巨匠、サンドロ・ボッティチェッリ(1445~1510)が描いた「ヴィーナスの誕生」は、今日もテレビ広告や映画の中で美女の表象とされる。

英国の美術史学者である著者は、西洋美術史で欠かせないこの傑作がどれほど非現実的かを指摘する。そばかすひとつない完璧な肌と贅肉のない身体は、実際の女性の体を表現したのではない。男性中心的な芸術界が生み出した幻想にすぎない。著者は長年にわたって女性に対する歪んだイメージを固定させた美術作品を紹介し、私たちの脳に刻印された女性像が実際とどれだけかけ離れているかを明らかにする。

ヴィーナスだけだろうか。著者は、聖母マリアも従順な女性の性的役割を固定させた代表的な女性像だと強調する。米国の有名女性誌「ブライズ」の1950~80年代の表紙で、ひざまずいて両手を合わせて祈る新婦がよく登場した。著者は、「現代社会でも依然として従順な聖女のイメージが女性に求められている証拠」と説明した。

数世紀の間に固定してしまった女性に対する歪んだイメージは、どうすれば正すことができるのだろうか。著者は、より多くの女性芸術家が公に自分の人生を話し、実際の姿をそのまま描くなら、本当の生の女性の姿が水面上に現れると期待する。

幸い、世界中で少しずつ変化が感知されている。スペインのプラド美術館とイタリアのウフィッツィ美術館は最近、女性芸術家にスポットライトを当てる展示を定期的に開催している。女性の出産を写真に撮って話題になった英国の彫刻家で写真家のハーマイオニー・ウィルトシャー氏のように女性の率直な声を盛り込む芸術家も増えている。

著者もそのような女性たちの一人だ。パンデミックで自宅で2人の子どもを育てながらこの本を書いたという著者は、最後の部分で、「子どもの世話をして書斎で書く時、心地よくなかった」としながらも、「それでも女性は自分の話をすることを止めてはならない」と述べた。


イ・ソヨン記者 always99@donga.com