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妻の犠牲

Posted June. 09, 2022 09:11,   

Updated June. 09, 2022 09:11

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成功の3大要素は才能と運、家族の犠牲ではないだろうか。20世紀の最も優れたドイツ人画家の一人であるマックス・ベックマンもこの3つをすべて持っていた。優れた才能と運で早くに成功し、危機が迫った時、そばで犠牲になった妻のおかげで再起に成功できた。

この絵は、ベックマンが57歳のときに描いた二重自画像だ。絵の中の女性は、ベックマンの二番目の妻マティルデ・ベックマン。マティルデは嘱望された音楽家だったが、21歳の時、20歳年上のベックマンと結婚し、自分のすべての夢をあきらめて内助の道を選んだ。この絵を描いた頃、2人はオランダで亡命生活4年目に入っていた。ドイツ時代、ベックマンは戦争の不安と恐怖を反映した人物画や社会批判的な絵で注目され、若くして名門のシュトゥットガルト美術大学の教授になり、主要な美術賞を席巻した。しかし1933年、ヒットラーが政権を握ると、「退廃美術家」の烙印を押され、教授のポストを奪われた。37年、ドイツ全域の美術館にあったベックマンの約500点の絵が没収され、妻とともにドイツを離れなければならなかった。

絵の中の夫妻は、今人生で最も困難な時期を共に耐えている。貧しい亡命者の身だが、最大限に着飾って外出している。2人は同じ方向を眺めているが、並んで立っていない。画家は自分を妻より前に歩く姿で大きく描いた。濃い茶色のスーツは黄色の明るい背景と対比的で、ベックマンの存在が際立って見える。暗い背景の中に描かれた妻は、右手に花束を握り、左手は夫の肩にのせた。うれしい日も悲しい日もいつも一緒にいるという意味のようだ。

ベックマンは47年に米国で再起するまでの10年もの間、不安な亡命生活を送った。その間も、ドイツ軍は60歳で心臓病まで患っているベックマンを戦争に強制徴集しようとした。どれほど不安で苦しかったことだろうか。最も苦しく暗い時期にそばで犠牲になった妻がいなかったなら、決して耐え抜くことはできなかっただろう。