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知られざる我が国の優れた文化遺産

Posted August. 18, 2001 10:32,   

「科学のあるわれわれの文化遺産」。

テレビシリーズの人気番組としてヒットした「ルーツ」という小説。アメリカに奴隷として売られ、数々の迫害を受けた7代前の祖父の足跡を辿る過程の感動が、未だに目にみえるようだ。

ところがこの手のルーツ探し小説は、韓国では考えられなかったはず。著者のアレックス・ヘイリが韓国で生まれていたなら、7代祖父の記録をいとも簡単に探し出していたことだろう。族譜(ゾッポ、家系譜)さえ見れば簡単に分かることだからだ。

60〜70年代の「朴正熙(パク・ジョンヒ、元大統領)式の経済開発」を全面に打出した無理押し的な近代化は、人々にして舶来文化に対する憧れの念を抱かせた。上流階級の主婦たちが次々と買ってきたことで社会問題にまで飛び火した日本製の「象印炊飯器」は、舶来品崇拝の悲しき象徴である。一方で、世界が驚くほど優れたわれわれの伝統は「野暮な封建時代の名残」として冷遇された。世界的にも貴重な歴史資料である族譜は、小部屋の片隅に押込んだまま、外国の犬の血統は宝物かのように重宝がるというハプニングが起きている。

科学者出身の著者は何冊もの本を通じて、すぐそばに居ながらにして本来の価値に気づかない我が遺産の優れた点を復権してきた。こうした努力の一環であるこの本においても、われわれの民俗文化と精神文化を科学的かつ合理的な解釈をとおして、本来の名声を取戻そうとしているのである。

楮から作られた伝来の韓紙(ハンジ、和紙)が持つ長所には、驚かされるばかりだ。1997年、時事週刊誌の「ライフ」誌が、人類史におけるこの1000年の歴史の中で最も重要な出来事として、グテンベルグが金属活字を発明して聖書を印刷したことを挙げている。ところが、当時製作された聖書は、500年あまりを経た現在紙の保管に問題が生じ、閲覧さえ不可能だといわれる。反面、韓紙で作られた本は、1000年の歳月にも関らず擦り切れることも腐ることもない。

著者はこれを、自慢に止めるのではなく、科学的な研究資料まで示している。韓紙の場合、われわれの先祖が初めて考案した紙の表面加工技術、つまり搗砧(ドチム)がそれだ。のりづけした紙を何枚も重ねて、踏みうす状の 搗砧機で万遍なく叩けば、滑らかで木目細かい表面になる。

その結果、漆を幾重にも塗り重ねた韓紙の鎧は、矢先でも突き抜けられないほどの強度を持っているとされる。高価な二重の窓ガラスより、障子を張った窓の方が保温だけでなく、湿気を防ぐ面効果も高いという実験結果は、簡単には信じられないはずだ。

風水地理(プンスチリ、地形・方位・五行をもとに吉凶を判断し埋葬地を決める理論)が、必ずしも非科学的なものばかりではないということを、土壌分析の実験結果として見せてくれる。普通、土は酸性を帯びているが、明堂(ミョンダン、風水学でいう優れた墓場)として確認された土地は、土壌が中性を示しており、卵を長期間埋めておいても全く腐敗しないという説明だ。これを、エジプトのミイラが発見された土壌と結び付けて分析した研究結果を紹介しているところもまた面白い。

たくさんの読物があるにも関らず、この本は題名と違って「科学」についての説明は、それほど多くない。各種歴史的な根拠だけでなく、様々な参考資料から書き写したばかりと思われるような資料が、生々しく並べられている。時には「文化遺産」というテーマには似つかわしくない話が過剰に盛込まれ、本の内容の一貫性を鈍らせている。

例えば「映画の『ジュラシックパーク』をヒットさせた立役者は韓国の恐竜」という章では、韓国の恐竜に関する説明は、序盤のほんのわずかなところだけ。代わりに恐竜の足跡の化石や冷血動物に関する議論および絶滅説など、恐竜の本に載せられそうな長ったらしい一般論がほとんどを占めている。このように、洗練されない「資料集め式の著述」がともすると、この本に傷をつけるのではないかと気になる。

イ・ジョンホ著

320面 1万3000ウォン カルチャーライン



尹正勳 digana@donga.com