統一部長官候補に指名された鄭東泳(チョン・ドンヨン)氏は14日の国会人事聴聞会で、北朝鮮を対話に引き出す手段として韓米合同軍事演習の延期に言及し、「2017年末に文在寅(ムン・ジェイン)大統領が米国に演習の延期を提案したことで対話のきっかけが生まれた。検討の余地がある」と話した。鄭氏は、また「北朝鮮は大韓民国の主敵」という表現には「同意しない。北は脅威だ」と応じ、統一部の名称変更や南北の9・19軍事合意を復元する必要性があると主張した。
鄭氏の発言を見る限り、李在明(イ・ジェミョン)政権の対北政策は尹錫悦(ユン・ソクヨル)前政権とは180度異なる方向に舵を切る可能性がある。過去の政権交代期にも、対北政策は極端に揺れ動いた。そのたびに国内では激しい論争と対立が繰り返された。鄭氏の発言からは、こうした急激な政策転換による弊害や失敗への反省は見られなかった。
鄭氏が南北関係改善に意欲を示すのは、南北対話や交流・協力政策を担当する省庁のトップとして、そして20年ぶりに再びその職を目指す「再挑戦者」として、ある意味当たり前かもしれない。しかし、現時点で政府内の調整すら十分に進んでいないように見える。国防長官に指名された安圭佰(アン・ギュベク)氏は15日、「韓米連合防衛態勢を基盤とした訓練と演習は、いかなる場合でも必要だ」と話した。
これまでの政権の一貫性を欠いた対北政策は、たびたび北朝鮮に利用されてきた。北朝鮮は挑発と対話を繰り返しながら、核戦力を高度化させてきた。新政権は発足直後、前向きな措置を通じて関係改善を図ろうとした。対北拡声器放送を中止すると、北朝鮮が南向け騒音放送を停止したことに触れ、李大統領も「北が予想以上に早く応じた」と評価した。しかし、その後、北朝鮮の態度に目立った変化は見られなかった。
北朝鮮は「敵対的二国関係」を宣言して以降、徹底的に韓国を無視する戦略をとっている。トランプ米大統領の呼びかけにも応じようとしなかった。韓米が競うように融和策を提示すれば、北朝鮮は新たな「対話ショー」に出る可能性もある。だが、その裏にある意図をまず正確に見抜くべきだ。南北関係の改善努力は必要だが、それは拙速な振れ幅ではなく、相互的な調整関係であるべきだ。一方的な融和策は、無謀な強硬策にも劣らぬ危険性を孕んでいる。
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