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テーブルクロスを敷いただけでも料理がよりおいしく感じられる訳とは

テーブルクロスを敷いただけでも料理がよりおいしく感じられる訳とは

Posted January. 15, 2022 08:20,   

Updated January. 15, 2022 08:20

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遊歩道に満ちている花の香り、土を濡らす雨の匂い、街に広がるコーヒーの香り…。コロナ禍の中、私たちは嗅覚を失ってしまったようだ。マスクのため、匂いを嗅ぐのが容易でないからだ。もちろん、私たちは目で見ることができ、耳で聞くことはできるが、世の中を完全に感じることはできない。最近のように、人間にとって五感がどれほど重要なのかに気づく時期も珍しいだろう。

英オックスフォード大学統合感覚研究所長である著者は、人間が多くの感覚を受け入れる過程をまとめた。科学知識と実験を基に、日常生活に役立つ知識を紹介するということに引かれて、本を読み始めた。著者は、周囲の環境をどのように変えれば、より効率的に働き、より楽しく生きることができるのかを教えてくれる。

著者によると、寝室にはテレビや照明を入れないほうがいい。2019年に米国立環境健康研究所が5年間、35歳から74歳までの4万3000人について研究した結果、人工照明に晒された人は、そうでない人に比べ、体重が平均5キロも重かった。人工照明が、人体の自然時計を妨害し、バランスを崩すからだ。著者は、テレビや照明だけでなく、スマートフォンも同様の結果を招くと指摘する。

オフィスの室内温度を巡り、男女の意見が食い違うことがしばしばある。熱を発散する筋肉がより多い男性は平均22.1度を楽に感じるが、女性はこれより高い25.2度を好む。この時、女性たちの意見どおり、温度を上げるのが会社レベルでは合理的な選択肢になりうる。16〜31度の間で1度ずつ温度が上昇するたびに、女性の数学およびスピーキングの平均点数は、直前温度での点数に比べ1、2%高くなったのに対し、男性は0.6%下がったことが分かった。

商売がうまくいかない飲食店のオーナーなら、テーブルクロスを敷くことをお勧めする。2020年、英国で発表された研究結果によると、テーブルクロスのあるテーブルの客は、そうでないテーブルの客よりトマトスープを50%多く食べた。また、スープがおいしいと評価した人の数も、テーブルクロスのあるテーブルで食べた客が10%多かった。視覚的な美しさが食欲をそそった結果だ。夕食中によく喧嘩する家族なら、自宅に円形食卓を持ち込んではどうだろうか。心理的に楽でない四角いテーブルよりも、丸いテーブルに座る時に、よりリラックスした対話を交わすことができるからだ。

感覚は幸せにも大きな影響を及ぼす。例えば、最近、多くの企業は、高齢者の「感覚欠乏」を満たすための商品を開発している。通常、高齢者たちは視覚や聴覚が鈍くなるのを一番苦しんでいるように見えるが、実は、彼らが最も必要とするのは、他人の肌を感じる触覚だという。抱きしめる時にストレスが解消されることに着目し、お金をもらって抱きしめる「抱擁専門家」が登場した理由だ。

実際、感覚欠乏は、コロナ禍の中では誰もが経験することだと、著者は言う。視聴覚のみ満たすテレビ電話だけでは、多様な感覚を望む人間の欲求を満たすことができないという。著者は、感覚を補完できる最新の機械を紹介しているが、すべての感覚を代替するにはまだ力不足のようだ。マスクを外したまま街を歩き、新たに会った誰かと遠慮なく握手する日が、早く来ることを待つしかない。


イ・ホジェ記者 hoho@donga.com