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スイスの田舎道に進出した中国ロボタクシーの世界展開

スイスの田舎道に進出した中国ロボタクシーの世界展開

Posted June. 23, 2026 08:12,   

Updated June. 23, 2026 08:12


運転席にも助手席にも誰もいないのに、タクシーのハンドルはひとりでに動いていた。自らウインカーを出して車線変更し、路肩に一時停車している車も巧みに避けた。ここは中国・上海市北西部の嘉定区安亭地区。1984年にドイツのフォルクスワーゲンと上海汽車(SAIC)の合弁会社による中国初の工場が建設され、中国自動車産業の前線基地としての役割を果たしてきた。この賢い中国のロボタクシーは約10キロの区間を走り、再び出発地点へ戻ってきた。

最近、「2026東亜(トンア)人工知能・革新(AI & INNOVATION)アカデミー」の研修プログラムで中国・上海を訪れた。最近、多くの企業が「未来イノベーション視察」として中国に研修団を派遣しているという話は聞いていたが、実際に行ってみると変化の跡が感じられた。嘉定区もその一つだった。伝統的な自動車産業の拠点だったこの地域は、今や完全自動運転ロボタクシーが走る未来モビリティの実験場へと姿を変えつつあった。

実のところ、自動運転の体験記は世の中にあふれており、ロボタクシーそのものにはさほど珍しく感じなかった。むしろ興味深かったのは、そのロボタクシーを運営する中国スタートアップ、ポニーAIの資金調達とグローバル戦略だった。

中国政府の全面的な支援を受けているのだろうと思い、政府支援の規模を尋ねたところ、意外な答えが返ってきた。国有企業系の投資会社から出資は受けているものの、グローバル展開を見据え、政府からの直接出資は受けていないというのだ。米中対立の中で、中国政府支援企業というレッテルが米国や欧州進出の障害になり得るためだ。

百度(バイドゥ)出身のエンジニアたちが米シリコンバレーで設立したポニーAIは、中国で主に走行データと自動運転の実績を積み上げ、世界の投資家から資金を調達して海外市場へ進出する「2本立て戦略」を選択した。同社の投資パートナーには、トヨタ、エヌビディア、ウーバー、アリペイ、カナダ年金基金、中国マーチャント・キャピタルなど、中国内外の企業や機関が名を連ねていた。

資金調達において走行実績は重要な指標となる。中国政府は北京、上海、広州、深センなどで完全無人自動運転の運行許可を相次いで出した。その結果、赤字経営のスタートアップであるポニーAIの累積自動運転走行距離は今年3月時点で4500万キロに達している。韓国全体の累積自動運転走行距離(昨年11月時点で1306万キロ)の3倍を超える。

中国IT大手の百度による欧州進出も同じ文脈で理解できる。スイス政府は最近、百度にレベル4の自動運転走行許可を与えた。スイスの田舎道で公共交通を補完する程度の規模だが、市場では百度の欧州上陸作戦の号砲と受け止められている。これに先立ち、中国・武漢では百度のロボタクシー100台以上が一斉に停止する事故もあったが、各国政府や投資家は「実際にやってみた企業」に高い評価を与えた格好だ。

自動運転だけではない。中国の数多くのAI企業は香港市場での新規株式公開(IPO)を通じて世界からの資金調達を加速させ、海外市場の先行確保にも乗り出している。今年第1四半期(1~3月)の香港IPO市場が2021年以来最大規模に拡大した理由でもある。

韓国も国民成長ファンドや独自AI基盤モデル事業を通じてAI産業の育成を進めている。長期投資の余力が乏しい韓国の技術エコシステムにおいて、政策金融の役割が必要なのは間違いない。しかし、それ以上に重要なのは、企業が実際の市場で競争し、失敗し、再挑戦しながら「やってみた」という実績を積み重ねられるよう実験の場を開くことだ。そうしてこそ、実績を基に投資を呼び込み、世界市場を切り開くことができる。

だが韓国では、まだそうした実験の場を目にすることは難しい。ロボタクシーは規制に阻まれてようやく歩き始めた段階であり、AI企業も政府予算の獲得競争により多くの力を注いでいるとの声も聞かれる。政府が新たな「舞台」を整えることこそ、最優先で求められる理由だ。