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任実・群山・蔚山の悲劇 道半ばの「寄り添う福祉」

任実・群山・蔚山の悲劇 道半ばの「寄り添う福祉」

Posted March. 24, 2026 08:54,   

Updated March. 24, 2026 08:54


この10日間で全羅北道任実(チョルラブクト・イムシル)、群山(クンサン)、蔚山(ウルサン)の3地域で一家死亡事件が相次いだ。昨年基準で政府の社会保障事業は1324件に上るが、いずれも彼らの死を防ぐことはできなかった。支援対象を選別する条件を満たさず危機世帯として把握されなかったか、危機の兆候が捉えられても継続的に介入できない制度的限界があったためだ。複雑で粗い福祉安全網が招いた悲劇である。

2014年の「松坡(ソンパ)三母子」事件以降、政府は危機世帯を事前に発見することに力を入れてきた。停電・断水、健康保険料滞納など47の危機兆候を分析し、各自治体が相談を行い利用可能な福祉サービスを案内している。しかし、すべての危機世帯を把握するには力不足だ。群山で死亡した母子は公共料金の滞納が2カ月に達していたが、監視基準の3カ月に満たず支援を受けられなかった。

仮に政府が危機世帯として把握しても、多くの福祉サービスは本人の申請がなければ給付を受けられない。この「申請主義」は各所に空白を生む。情報弱者である高齢者や孤立した若者、精神障害者などは申請自体が難しく、支援から排除されがちだ。書類準備など煩雑な手続きや、自らを福祉対象として明らかにすることへの心理的負担から申請をためらう場合も多い。

申請主義の限界を補うため、公務員が社会保障給付を「職権申請」できる制度もあるが、現場では依然として制約が多い。子ども4人とともに命を絶った蔚山の事例がそれだ。公務員が基礎生活保障の申請を案内したが、当事者は応じなかった。職権申請を行うにも、本人の金融情報提供への同意がなければ不可能だ。昨年、新たに生計給付を受けた17万1370世帯のうち、職権申請は0.1%(198件)にとどまった。政府は、就労意欲の不足や制度的限界により給付を受けられない「非受給貧困層」が30万人を超えると推計している。

申請主義の克服は認識の転換から始まる。福祉は国家の「施し」ではなく国民の「権利」であるという認識だ。福祉制度を早期に確立した国々は「寄り添う福祉」によって安全網を緻密に構築してきた。英国は雇用主から勤労所得情報をリアルタイムで受け取り、統合福祉手当を即時に再算定する。ベルギーは年金や健康保険などを担う機関間のデータ連携の障壁を取り払い、受給資格を自動付与する「社会保障クロスバンク」システムを整備している。国民が危機に陥る前に国家が先に手を差し伸べる仕組みだ。

李在明(イ・ジェミョン)大統領は昨年8月の懇談会で「福祉申請主義は残酷な制度だ」とし、資格があれば自動的に給付を受けられるよう制度改善を指示した。その後、保健福祉部は人工知能(AI)を活用した危機世帯の把握など支援強化を打ち出したが、空白がどこまで解消されたかはなお疑問が残る。

申請主義の改善が直ちに安全網の完成を意味するわけではない。所得や扶養義務者基準、就労能力の評価など厳格な条件により支援から排除されるケースも少なくない。12年前、「松坡三母子事件の再発を防ぐ」とした政府の誓いが、現政権でこそ確実に守られることを望む。