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介護施設321カ所中54カ所で確認、認知症高齢者狙った資産の不正取得

介護施設321カ所中54カ所で確認、認知症高齢者狙った資産の不正取得

Posted December. 17, 2025 09:07,   

Updated December. 17, 2025 09:07


白いリネン布や紙おむつ、使い捨てのビニール袋を積み上げた銀色のカートが、廊下を横切った。夜の間に高齢者が使用した紙おむつがあふれると、生臭いアンモニア臭が、消毒薬の匂いを突き抜けて廊下に広がった。休むことなく回り続ける洗濯機の音と、介護職員の慌ただしい足音が、まだ静まり返った施設内に響く。

カートを押してたどり着いた706号室。半分ほど閉まっていた引き戸を大きく開けると、4台のベッドの上で、8つの目が一斉にこちらを向いた。まだ眠気の残る表情もある。介護職員が手慣れた動作で濡れたおむつを替え、新しいリネンを敷くうちに、ブラインドの下りた窓の外が少しずつ明るくなっていった。先月19日、ウリ介護施設7階の朝は、こうして始まった。

どの街にもありそうな、ごく平凡な介護施設の風景の裏側で、深刻な問題が進行していた。本人が知らぬ間に毎月の基礎年金を引き出され、通帳に1ウォンも残っていない701号室の高齢者。1年以上にわたり施設利用料が滞納されているにもかかわらず、家族の訪問が途絶えた703号室の高齢者。入所から数カ月で財産の8割を失った702号室の高齢者もいる。

いずれも、全国5917カ所の介護施設で暮らす約31万人の認知症患者のうちの、ほんの一例にすぎない。東亜(トンア)日報ヒーローコンテンツチームが、韓国老人長期療養機関協会とともに介護施設321カ所を調査したところ、54カ所で、認知症高齢者の財産が家族や知人などによって不正に引き出されるなどの被害が確認された。大都市の療養病院から地方の小規模施設まで、地域を問わず広がっている。

高齢者の財産を守る役割を担う成年後見人が配置されている施設は、調査対象の中でわずか1カ所にとどまった。制度は存在していても、実際には十分に機能していない実態が浮かぶ。

取材チームは、このうち認知症高齢者43人が暮らすウリ介護施設7階病棟で24時間を過ごし、入所者たちの日常を観察した。特に、財産を失い、社会とのつながりが薄れた3人の高齢者の生活に焦点を当てた。

脆弱な保護制度の隙間には、判断能力が低下した高齢者の財産が、周囲の人間によって容易に侵害されてしまう死角が横たわっている。介護の現場は、いまも静かにその現実を抱え込んでいる。