
トランプ米大統領は15日、合成麻薬「フェンタニル」を大量破壊兵器(WMD)に指定した。中国やメキシコなどから大量流入し、多数の米国人を死に至らしめてきた薬物を、生物・化学兵器と同列に位置付けた形だ。
トランプ氏は同日、ホワイトハウスで開かれた米・メキシコ国境警備隊の勲章授与式で、「フェンタニルを大量破壊兵器として公式に分類する」と明らかにした。ホワイトハウスはその後、フェンタニルおよび製造に用いられる前駆体化学物質をWMDに指定する大統領令を、公式サイトで公開した。
フェンタニルは、アヘンと類似した作用を持つ合成鎮痛・麻酔剤だ。2000年代以降、メキシコなどの麻薬組織が、ヘロインより収益性の高いフェンタニルを米国に大量に密輸してきた。23年には、米国だけで約7万3千人がフェンタニルの過剰摂取で死亡するなど、深刻な社会問題となっている。18~45歳の米国人の主要な死因の一つでもある。
トランプ氏は「今年5月、米国史上最大規模のフェンタニル取り締まりを行い、300万錠を押収した」とし、「致死的なフェンタニルが流入する災いから米国人を守るため、さらに一歩踏み込む」と述べた。
今回の発表には、政治的な狙いがあるとの見方もある。前駆体の流入を理由に、中国に課した高関税や、ベネズエラで進行中の軍事作戦を正当化する意図があるとの指摘だ。一方で、麻薬類をWMDに含めることの是非を巡り、議論が予想される。
トランプ氏は、自身のフェンタニル対策を自賛し、「中国は我々と非常に緊密に協力し、流通するフェンタニルの量を減らしている」と述べた。さらに、「海上から流入する麻薬は95%減少した。より容易な陸路でも攻撃を開始する」とし、ベネズエラなどを念頭に置いた地上作戦の拡大を示唆した。
金聖模 mo@donga.com






