鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一部長官が対北朝鮮政策で相次いで混乱を招く言動を見せ、波紋を広げている。鄭氏は先月29日、国際フォーラム出席のため訪れたドイツ・ベルリンで「北朝鮮は米本土を攻撃できる3大国家の一つになってしまった」と述べた。北朝鮮を中国、ロシアと並ぶ大陸間弾道ミサイル(ICBM)能力を備えた核保有国と認めるかのような発言だった。
これは李在明(イ・ジェミョン)大統領が鄭氏の発言の5日前に行った言及とも矛盾する。李氏はニューヨーク訪問時に、北朝鮮はICBMの大気圏再突入技術だけを残していると述べた。大気圏再突入時の高熱や衝撃に耐えるこの技術は、ICBM完成に向けた最後の段階だ。陳永承(チン・ヨンスン)合同参謀本部議長も最近、北朝鮮が大気圏再突入能力を検証できていないと指摘した。にもかかわらず、対北朝鮮政策の主管長官が北朝鮮がICBM技術を完成させたかのように話すため、国民は混乱せざるを得ない。
鄭氏はまた、北朝鮮が自ら「戦略国家」と称しているとして、北朝鮮の戦略的地位が変わった現実から出発すべきだとも述べた。戦略国家とは、北朝鮮が核保有国を自称する際に使う言葉だ。鄭氏の発言は、北朝鮮の思惑どおり核保有を認めた状態で交渉すべきだという意味に聞こえる。核保有国の認定は不可能とする政府の非核化目標と矛盾する主張だ。
鄭氏が最近述べた「平和的2国家」論も政府内の足並みの乱れを招いた。北朝鮮を別個の国家と認めようとするものだが、大韓民国の領土を「韓半島とその付属島嶼」と規定し、統一を指向すると定めた憲法条項に反する。魏聖洛(ウィ・ソンラク)国家安保室長が「政府は2国家論を認めない」と述べたにもかかわらず、鄭氏はこれを曲げていない。
1カ月を切った慶州(キョンジュ)アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議では、北朝鮮核問題の当事国である米国、中国、日本などとの激しい外交戦が予想される。米朝首脳会談の可能性も開かれている状況だ。韓国政府内部の混乱を放置すれば、政策調整のパートナーである米国までも韓国の非核化意思を疑うかもしれない。このままでは、仮に米朝交渉が実現しても、北朝鮮核問題の解決の方向を巡って混乱が深まることは排除できない。さらに対北朝鮮政策は陣営間の立場が鋭く対立するため、世論の支持が不可欠だ。政府が「ワンボイス」とならなければ世論を説得できない。対北朝鮮政策の総責任者が軽率な発言でこの原則を壊してはならない。
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