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中国の覇権主義を助ける米国第一主義という逆説

中国の覇権主義を助ける米国第一主義という逆説

Posted September. 19, 2025 07:59,   

Updated September. 19, 2025 07:59


「最近、インドのモディ首相と中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領の親密な様子が示したように、米国はインドを敵側(中国・ロシア)に追いやりかねない」

前米国務副長官のカート・キャンベル氏と前大統領補佐官(国家安全保障担当)のジェイク・サリバン氏は、4日付の外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」への寄稿でこう指摘した。1日に中国・天津で開かれた上海協力機構(SCO)首脳会議で、中国、ロシア、インドの3首脳が和やかに言葉を交わす場面に言及し、強い懸念を示したものだ。主要な海外メディアも、トランプ政権による関税圧力に対抗する「反米結集」の象徴的シーンと報じた。

トランプ大統領と「ブロマンス」を誇示してきたモディ氏が、みずから習氏とプーチン氏のもとに歩み寄ることになった背景には、米国による「関税爆弾」がある。トランプ政権はインドが輸入するロシア産原油を制裁対象とし、最大50%という高関税を課した。しかし、世界最大の人口を抱え、冷戦時代には非同盟運動のリーダーを自任したインドは、屈従より自主を選んだ。インド外務省は「インドは経済的必要性に応じて決定を下す主権国家だ」とし、米国の要求を拒絶した。

これまでの米国の歴代政権は、中国牽制のためにインドを引き入れようと努めてきた。ブッシュ政権下で推進された米印民生用原子力協定はその象徴だ。中国とインドは1962年以来、国境地帯で武力衝突を繰り返してきたため、インドは2007年、米国主導の安全保障枠組み「クアッド(Quad)」に加盟し、対中牽制に加わった。ところが、トランプ氏の「米国第一」外交が、クアッドの一角を揺るがしている。

不協和音はこれにとどまらない。軍事力を伴うより強力な対中牽制策として発足した米英豪の安全保障協力枠組み「オーカス(AUKUS)」も不安定な状況にある。コルビー米国防次官補(政策担当)は昨年のある行事で、「米国の原子力潜水艦は非常に重要な資産だ。我々が最も必要とする時期に、なぜ『王冠の宝石』を(オーストラリアに)渡すのか」と疑問を呈した。バイデン政権はオーカス合意に基づき、32年までに原子力潜水艦3隻をオーストラリアに売却することを決めていた。中国海軍の太平洋進出を封じるため、戦略資産である原子力潜水艦を提供する狙いだったが、生産量が十分ではないとの指摘が出るなか、米国防総省はオーカス協定の見直しに着手した。

米国の方針転換にオーストラリアは衝撃を受けた。オーストラリアのターンブル元首相は「我々は30億ドルを支払うが、実際に原子力潜水艦が引き渡される保証はない」とし、「オーカスはオーストラリアにとって不公平かつ恐ろしい協定だ」と強く批判した。

このようにトランプ政権の「米国第一」外交が同盟間の亀裂につながり、中国にとっての「好機の窓」を広げている。トランプ政権の3500億ドル規模の対米投資圧力に直面している韓国も例外ではない。中国はその隙を突き、韓米間の分断を狙っている。中国の王毅外相が17日、趙顕(チョ・ヒョン)外交部長官に「一方的な強圧がまん延する中、両国は共に貿易保護主義に反対すべきだ」と述べたのも同じ文脈だ。北朝鮮の核の脅威に加え、中ロ朝が結束する現状では、韓米同盟の価値は極めて大きい。米国の過剰な通商要求には毅然とした態度で臨みつつ、韓米日3国の安全保障協力を一層強化するという慎重かつ緻密な外交が不可欠だ。