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タイとカンボジアが国境地帯で武力衝突、民間人23人死傷

タイとカンボジアが国境地帯で武力衝突、民間人23人死傷

Posted July. 25, 2025 08:24,   

Updated July. 28, 2025 19:09


タイとカンボジアの軍が24日、両国の国境地帯で武力衝突し、少なくともタイの民間人9人が死亡、14人が負傷したと、BBCなどが報じた。タイは前日にも「カンボジアが埋設した地雷が爆発し、兵士が負傷した」とし、カンボジア大使を追放した。一日で武力衝突となり、多数の死傷者が発生したのだ。

両国は、サンスクリット語で「聖地」を意味する11世紀のクメール遺跡「プレア・ビヒア寺院」の領有権をめぐっても長年対立してきた。また、タイのペートンタン首相がカンボジアの事実上の統治者であるフン・セン上院議長に対して自国軍を酷評したことが明らかになり、憲法裁判所から職務停止を受けた状態だ。両国の紛争の歴史が深く、指導者の進退も複雑に絡み合っているため、当面の間、対立と混乱が続くとみられている。

●タイvsカンボジア「相手側が先に攻撃した」

24日午前8時20分頃、タイ東部スリン県とカンボジア北西部ウドーミアンチェイ県の国境地帯で武力衝突が発生し、タイ側で多数の民間人死傷者が出た。両国はともに「相手側が先に攻撃した」と主張している。

タイ軍兵士は、ドローンが旋回する音が聞こえた後、タイ軍基地に接近した武装したカンボジア兵6人が銃撃を開始し、武力衝突が始まったと主張した。また、カンボジアが故意に民間人が密集する地域に多連装ロケット「BM-21」を発射し、人的被害が拡大したと非難した。タイは周辺住民約4万人を緊急避難させ、F-16戦闘機を緊急出動させて対応した。

タイ側は最近、カンボジアが国境地帯に意図的に地雷を埋設し、兵士の被害が拡大しているとも主張している。首相代行のプームタム副首相兼内相は23日、「カンボジア側が埋設した地雷で軍の兵士が負傷した」として、カンボジアの駐タイ大使を追放し、タイの駐カンボジア大使の召還も決めた。

一方、カンボジア側は地雷埋設を否定し、同日の攻撃もタイが先に仕掛けたと主張する。カンボジア国防省は24日、「タイ軍の先制攻撃があったため、防衛の一環として対応しただけだ」と主張した。フン・セン氏は「タイ軍による砲撃を受けたが、我が軍を信じて冷静に対応せよ」と指示した。

●ヒンドゥー教寺院の領有権争いの歴史も深い

両国は「プレア・ビヒア寺院」を巡っても激しく対立している。インドシナ半島を統治していたフランス軍が1953年にカンボジアから撤退した後、タイがこの寺院周辺を占拠したことで、対立が本格化した。

カンボジアは国際司法裁判所(ICJ)に「タイの寺院占拠は不当だ」と提訴した。ICJは1962年、2013年共に、「寺院の所有権はカンボジアにある」と判決を下したが、タイはこれを受け入れていない。11年にも両国が寺院周辺で衝突し、20人以上が死亡した。

ペートンタン氏が先月15日、フン・セン氏と交わした通話内容が流出したことで、タイでは反カンボジア世論が高まっている。ペートンタン氏は父親のタクシン元首相と親しいフン・セン氏を「おじさん」と呼んだ。また、国境地帯でタイ軍が適切に対処できていないとして自国軍司令官を酷評した。ペートンタン氏はフン・セン氏に「望むことはすべて叶えます」とへりくだった態度を取り、激しい批判を浴びた。この影響で職務停止状態となっている。

ただし、全面戦争に突入する可能性は低いとの見方が多い。両国とも国内の情勢が戦争を起こすほど容易ではないためだ。BBCは「カンボジアは経済難、タイは政治的対立が深刻で、現状が全面戦争に拡大すると見る人は多くない」と分析した。タイが軍事力、経済力などでカンボジアよりも優位にある点もこの見方に説得力を与えている。ただし、ペートンタン氏をめぐる論議にみられるように、タイ政界の対立がしばらく続く可能性が高く、国際紛争に適切に対応するのが難しいとの指摘もある。


金聖模 mo@donga.com