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新大統領、早急な訪米だけが正解ではない

Posted June. 07, 2025 09:41,   

Updated June. 07, 2025 09:41


新大統領が就任すると、いつ米国を訪問するかが関心事となる。どれだけ早く米国を訪れ、韓米首脳会談を行うかが、新政権の外交能力を示す指標のように見なされることもある。文在寅(ムン・ジェイン)元大統領は就任51日後に米国を訪れ、トランプ大統領と会談した。当時、大統領府は歴代政権の中で最も早く開催された韓米首脳会談であると強調した。この記録は2022年、尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領がバイデン前大統領の訪韓により、就任11日後に会談を行ったことで破られた。

6月3日の大統領選挙で発足した李在明(イ・ジェミョン)政権の前に立ちはだかる韓米同盟の課題は、これまで以上に重い。韓米首脳会談を通じて首脳外交を復活させ、経済・安全保障の不確実性を軽減することは、最も重要な課題の一つだ。しかし、最近の米国の状況を考えると、新大統領の訪米は一日でも早い方が良いという従来の外交の「常識」が依然として有効なのか疑問だ。

まず、トランプ氏の外交スタイルは過去とは異なる。トランプ外交の特徴は、予測不可能性だ。従来の外交慣例を破り、相手を露骨に追い詰め、「ストロングマン」としての姿を誇示するが、トランプ氏特有の誇示欲を刺激し、目に見える成果を提供することで、実利を得ることが可能だった。第1次トランプ政権には、多くの海外首脳が先を争ってトランプ氏に媚びを売り、どれほど親密な関係を築いているかを競い合った理由だ。

しかし、第2次トランプ政権になると、この「トランプ方策」は以前ほどの効果を発揮していない。より強硬な「米国第一」政策を前面に押し出し、要求条件が厳しくなった。石破茂首相はトランプ氏の就任18日後に首脳会談を行った。1兆ドルの投資約束などの「プレゼント」を差し出したが、「トランプ関税」に対する譲歩は得られなかった。海外メディアは、「黄金のゴルフクラブ」を贈る「媚びの芸術」でトランプ氏との蜜月関係を築いた安倍晋三元首相の方式が、第2次トランプ政権には通用しなくなったことを示す代表的な事例だと指摘した。

逆に、トランプ氏特有の柔軟性は弱まった。先月、米国を訪れた南アフリカ共和国のラマポーザ大統領はレアアース協力などを提案したが、「南アフリカの白人へのジェノサイド(大量虐殺)」疑惑を持ち出したトランプ氏の攻勢により、会談は失敗に終わった。米中関税戦争で米国の最大の弱点とされるレアアース問題を解決する機会を犠牲にしてまで、「MAGA(米国を再び偉大に)」陣営が提起する陰謀論を持ち出したのだ。問題は、第2次トランプ政権の人事と外交に強い影響力を持つ強硬なMAGA陣営と陰謀論者が、最近韓国を標的にしている点だ。彼らは先月、クリントン元大統領の訪韓についても、「韓国大統領選の結果にかかった中国の利害関係のため」と主張し、韓中関係に対する陰謀論を広めている。

トランプ氏の関税猶予期限は来月8日まで、あと1か月しかない。在韓米軍の戦略的柔軟性拡大要求が既定路線となる中、米国防総省の8月の国家防衛戦略(NDS)発表前後に在韓米軍の削減と駐留経費の韓国側負担増額要求が現実化する可能性があるとの懸念も出ている。

新政権が迅速に解決策を講じるべき課題だ。しかし、早急な訪米が必ずしも正解とは限らない。15日には主要7ヵ国(G7)首脳会議、24日には北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が予定されている。いずれもトランプ氏が出席する予定だ。リスクを抑えながら米国との信頼を再確認し、韓米首脳外交を復活させる機会となる。韓米同盟への懸念を払拭しようと訪米を急ぎすぎて失敗すれば、その結果は取り返しのつかないものになる可能性がある。