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気がつけばクーデター共和国

Posted May. 17, 2025 07:24,   

Updated May. 17, 2025 07:24


 

「韓国は私たちに半導体や自動車を輸出するが、私たちも韓国に輸出するものができた。それは戒厳(martial law)とクーデターだ」

先日、ある企業家が東南アジアのある国を訪問した。クーデターと政治不安が繰り返されているこの国の有力政治家は、この企業家に非常戒厳後の韓国の政治状況を尋ねると、このように語ったという。この企業家は、「冗談だったのかもしれないが、非常戒厳が韓国に対する認識をどう変えたのかを示しているようで、苦々しく感じた」と語った。

尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領が12・3非常戒厳を発動して165日が経った。憲法裁判所の全員一致の判決で尹氏は罷免され、内乱首謀の容疑で捜査を受けている。しかし、戒厳事態の波紋は、また別の対立と分裂の火種となっている。

大統領選を控えた政界では、非常戒厳が引き起こした極端な政治が固定化した。巨大2党は憲法と法律の境界を越える超法規的な措置を連発し、毎日「クーデター勢力」と非難し合っている。

最大野党「共に民主党」は15日、与党「国民の力」の中央選挙対策委員会が、5・18光州(クァンジュ)民主化運動の鎮圧を主導した容疑で有罪判決を受けた鄭鎬溶(チョン・ホヨン)元国防部長官を常任顧問に委嘱して取り消したことについて、「金文洙(キム・ムンス)候補はまたクーデターを起こすつもりなのか」と批判した。その前日、「国民の力」は、曺喜大(チョ・ヒデ)大法院長(最高裁長官)を狙った民主党の司法府大統領選介入疑惑真相究明聴聞会について、「法を壊し、権力だけを築こうとする議会クーデターだ」と批判した。民主党は同日、「曺氏は、政治的中立を損なった司法クーデターの全容を告白し、辞任せよ」と要求した。

「クーデター勢力」という非難は、対立政党だけに向けられるのではない。「国民の力」候補の強制交代の過程では、「国民の力」内でも「親衛クーデター」「夜陰の政治クーデター」「クーデター残党のクーデター」という表現が続々と登場した。

誇張が含まれていたとしても、今日「クーデター勢力」だと烙印を押した相手と、明日すぐに対話や妥協に臨むことは難しい。一日に何度も対立政党に向かって、時には意見の異なる味方にまで「クーデター勢力」と非難する政治は、正常とは言えない。

クーデターが政界の日常的な言葉になったように、極端な政治行動も拡散している。今月だけでも、大統領権限代行を務めた韓悳洙(ハン・ドクス)前首相が辞任して大統領選に出馬し、前例のない「代代代行」体制が発足したほか、民主党は憲政史上初めて大法院の弾劾推進に乗り出し、「国民の力」は初の大統領選候補強制交代を試みたが失敗した。前例のない出来事が次々と起こっているのだ。

米国議会では、二大政党が慣習的に守ってきた暗黙の線を越える極端な措置を「ニュークリア・オプション」(究極の選択)と呼ぶ。少数野党のフィリバスターを無力化するために、議決定足数を過半数に引き下げる措置などが含まれるが、共倒れを覚悟しなければ軽々しく取ることはできないという警告が込められている。

非常戒厳と弾劾によって行われる早期大統領選を経て発足する次期政府に、民主主義の回復は避けて通れない責務だ。民主党の李在明(イ・ジェミョン)候補は15日の遊説で、「これからは互いを尊重し、認め合おう。これからの政治はそのようにしよう」と呼びかけた。「国民の力」の金文洙候補は12日、「民主主義は対話と妥協と忍耐によって成し遂げられるもの」とし、保守系少数野党「改革新党」の李俊錫(イ・ジュンソク)候補は、「権力ではなく民主主義を回復するために出てきた」と訴えた。大統領選まであと17日だ。これからはクーデターではなく、統合と回復に対する真摯な約束をもっと多く聞けることを期待したい。