あなたが虚偽情報の主人公になったら
Posted April. 09, 2025 07:48,
Updated April. 09, 2025 07:48
あなたが虚偽情報の主人公になったら.
April. 09, 2025 07:48.
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憲法裁判所の尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の罷免決定言い渡しの2日前、いわゆる私設情報誌(チラシ)に筆者の名前が登場した。それ自体も驚きだったが、内容はさらにとんでもなかった。筆者が知人に何対何で弾劾が認容されるというメールを送り、「扇動中」というのだ。全くしていないことをもとに事実かどうかという周囲からの連絡を受け、虚偽情報の被害者であることを実感した。弾劾政局でのこのような中傷性の虚偽情報の最大の被害者は、憲法裁判官だろう。「12・3非常戒厳」から4ヵ月の間、オンライン・オフラインで拡散した虚偽情報には露骨な人身攻撃まで含まれていた。そのため裁判官たちはテロの脅威に晒された状態で審理を進めなければならなかった。極度のストレスで皮膚に発疹が現れた裁判官もいるというが、虚偽情報とこれを根拠にした脅迫の影響が少なくないだろう。虚偽情報による被害範囲は個人を超えている。誰が誰の味方だとか、台本通りに仕組んでいるといった裁判官に対する虚偽情報は、弾劾賛成・反対の主張に都合良く悪用された。弾劾政局で雨後の筍のように四方八方に広まった虚偽情報は、ただでさえ深刻な嫌悪と分裂を煽るトリガーになった。オンラインで拡散され、極端な性向のユーチューブで増幅された虚偽情報に、ある人は陰謀論の確証バイアスにとらわれ、相手陣営を呪い、ある人はこれを利用して金を稼いだ。ついに、偽情報は陰で流され、ユーチューバーが騒ぎ立てる次元を超えた。国政の責任者である大統領は、不正選挙疑惑を戒厳宣布の理由に挙げた。民意の代弁者である政党は、憲法裁判官に関連する捏造写真を事実であるかのように論評した。弾劾審判で大統領の弁護人が言った「中国人たちの不正選挙の自白」という主張は、失笑を買った。このように、虚偽情報は中傷謀略のブラック・プロパガンダを超え、韓国の民主主義の根幹を汚染するウイルスとして、行政府、立法府、司法府の隅々にまで浸透した。スウェーデンのある研究所が最近、虚偽情報が韓国の民主主義を脅かしているという診断を出した。ヨーテボリ大学のV-Dem(民主主義の多様性)研究所は、韓国を自由民主主義より一段階下の国家と評価し、独裁が進行中の国に分類した。そのうえで、独裁が進行中の国の政府は、意図的に二極化を助長しようと虚偽情報を利用すると指摘した。虚偽情報が嫌悪を煽り、嫌悪が相手陣営を悪魔化する政治的二極化を助長する連鎖作用を私たちは目撃した。問題はそれだけにとどまらない。虚偽情報で肥大化した政治の二極化は、今や真実と虚偽の境界を曖昧にし、何が真実で何が偽りなのかを見分ける力を奪うほどになっている。ファクトではなく、陣営論理に頼って虚偽情報の真偽を判断するということだ。これを証明した研究がある。昨年、東アジア研究院(EAI)が行った世論調査を、慶熙(キョンヒ)大学政治外交学科の尹聖理(ユン・ソンイ)教授が分析したところ、尹前大統領に対する敵対感情が強いほど、進歩陣営が主張しそうな虚偽情報を真実として受け入れた。最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表に対する敵対感情が強いほど、保守陣営が主張しそうな虚偽情報を真実として受け入れた。真実を言っても、相手陣営の主張はすべて「フェイクニュース」になる。政治的二極化の土壌となった虚偽情報が、今や政治の二極化の結果になる悪循環が起きている。これは、「フェイクニュース撲滅」を主張していたにもかかわらず、偽情報を事実と信じ、反対陣営への敵対を煽った尹前大統領の政治的失踪が残した不幸な遺産だ。虚偽情報を処罰し規制するだけでは、根本的な解決は難しい。憲法裁判所が尹前大統領の退行を司法手続きで正したが、韓国社会を分断した両極端な政治を清算する課題はまだ残っている。zeitung@donga.com
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憲法裁判所の尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の罷免決定言い渡しの2日前、いわゆる私設情報誌(チラシ)に筆者の名前が登場した。それ自体も驚きだったが、内容はさらにとんでもなかった。筆者が知人に何対何で弾劾が認容されるというメールを送り、「扇動中」というのだ。全くしていないことをもとに事実かどうかという周囲からの連絡を受け、虚偽情報の被害者であることを実感した。
弾劾政局でのこのような中傷性の虚偽情報の最大の被害者は、憲法裁判官だろう。「12・3非常戒厳」から4ヵ月の間、オンライン・オフラインで拡散した虚偽情報には露骨な人身攻撃まで含まれていた。そのため裁判官たちはテロの脅威に晒された状態で審理を進めなければならなかった。極度のストレスで皮膚に発疹が現れた裁判官もいるというが、虚偽情報とこれを根拠にした脅迫の影響が少なくないだろう。
虚偽情報による被害範囲は個人を超えている。誰が誰の味方だとか、台本通りに仕組んでいるといった裁判官に対する虚偽情報は、弾劾賛成・反対の主張に都合良く悪用された。弾劾政局で雨後の筍のように四方八方に広まった虚偽情報は、ただでさえ深刻な嫌悪と分裂を煽るトリガーになった。オンラインで拡散され、極端な性向のユーチューブで増幅された虚偽情報に、ある人は陰謀論の確証バイアスにとらわれ、相手陣営を呪い、ある人はこれを利用して金を稼いだ。
ついに、偽情報は陰で流され、ユーチューバーが騒ぎ立てる次元を超えた。国政の責任者である大統領は、不正選挙疑惑を戒厳宣布の理由に挙げた。民意の代弁者である政党は、憲法裁判官に関連する捏造写真を事実であるかのように論評した。弾劾審判で大統領の弁護人が言った「中国人たちの不正選挙の自白」という主張は、失笑を買った。このように、虚偽情報は中傷謀略のブラック・プロパガンダを超え、韓国の民主主義の根幹を汚染するウイルスとして、行政府、立法府、司法府の隅々にまで浸透した。
スウェーデンのある研究所が最近、虚偽情報が韓国の民主主義を脅かしているという診断を出した。ヨーテボリ大学のV-Dem(民主主義の多様性)研究所は、韓国を自由民主主義より一段階下の国家と評価し、独裁が進行中の国に分類した。そのうえで、独裁が進行中の国の政府は、意図的に二極化を助長しようと虚偽情報を利用すると指摘した。虚偽情報が嫌悪を煽り、嫌悪が相手陣営を悪魔化する政治的二極化を助長する連鎖作用を私たちは目撃した。
問題はそれだけにとどまらない。虚偽情報で肥大化した政治の二極化は、今や真実と虚偽の境界を曖昧にし、何が真実で何が偽りなのかを見分ける力を奪うほどになっている。ファクトではなく、陣営論理に頼って虚偽情報の真偽を判断するということだ。これを証明した研究がある。昨年、東アジア研究院(EAI)が行った世論調査を、慶熙(キョンヒ)大学政治外交学科の尹聖理(ユン・ソンイ)教授が分析したところ、尹前大統領に対する敵対感情が強いほど、進歩陣営が主張しそうな虚偽情報を真実として受け入れた。最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表に対する敵対感情が強いほど、保守陣営が主張しそうな虚偽情報を真実として受け入れた。真実を言っても、相手陣営の主張はすべて「フェイクニュース」になる。
政治的二極化の土壌となった虚偽情報が、今や政治の二極化の結果になる悪循環が起きている。これは、「フェイクニュース撲滅」を主張していたにもかかわらず、偽情報を事実と信じ、反対陣営への敵対を煽った尹前大統領の政治的失踪が残した不幸な遺産だ。虚偽情報を処罰し規制するだけでは、根本的な解決は難しい。憲法裁判所が尹前大統領の退行を司法手続きで正したが、韓国社会を分断した両極端な政治を清算する課題はまだ残っている。zeitung@donga.com
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