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独り飛ぶ鳥

Posted March. 13, 2025 08:55,   

Updated March. 13, 2025 08:55

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大きな鳥が力強く空を飛んでいる。まるで偽装したかのように、体は下の森と同じ色、同じ模様で塗られている。下の灰色の塀の上の巣の中には、白い卵3個が哀れに置かれている。どうして鳥は、自分の卵を抱かずに独り飛んでいるのだろうか?

春を描いた画家は多いが、ルネ・マグリットのように想像力に富んだ春の様子を表現した画家は珍しい。「春」(写真)は、1965年に油絵で描いた作品を、2003年フランスで石版画で製作したものだ。マグリットは、見慣れないイメージや相反するイメージを一つの画面の中に配置し、鑑賞者を混乱させる超現実主義の絵で有名だ。この絵でも鳥の巣と石垣は写実的で立体的に描写したものの、鳥は模様紙を切り取ったように平面的で非現実的に表現した。

飛び立つ鳥は、マグリットの絵によく登場するイメージだ。鳥は通常、自由と移動を象徴する。理想と夢を暗示することもある。鳥の巣は、生命と誕生、保護の意味を持つが、この絵では、親鳥に捨てられた存在になっている。低い石垣には、窪んだ跡が数多い。荒涼とした石垣は、過酷な昨年の冬を喩えているのかもしれない。それなら、画家は、過去を後にして理想を求めて旅立ちたい心情を表現したのだろうか?自分の自由と飛翔のために障害になる卵を捨てたままだ。

この絵で最も特徴的なのは、鳥の偽装術だ。偽装術とは、敵を欺くために自分を偽りで飾る技術だ。現実は冬だが、春に偽装したという意味かもしれない。鳥が森の模様をしたのは、すべての生命は自然と分離できないというメッセージを含んでいるという解釈も可能だ。

このように、マグリットの絵は、鑑賞者たちに様々な疑問と解釈をかもし出す。性善説を信じて、再び絵を見てみよう。もしかすると、親鳥は卵を捨てたのではなく、餌を求めて飛んでいるのではないだろうか。春が来たのだから、また抱く力を出すために。