Go to contents

ジェイミーがいっぱいの社会に「英才的モーメント」はない

ジェイミーがいっぱいの社会に「英才的モーメント」はない

Posted March. 07, 2025 08:56,   

Updated March. 07, 2025 08:56

한국어

4歳のジェイミーがお菓子を数えるのを見た母親のイ・ソダムさんは、「これは英才的モーメント」という思いで数学塾に登録する。英語塾のネイティブ講師からジェイミーが排便訓練に成功したという電話を受け、ソダム氏は嬉しい気持ちで排便訓練の課外授業を取り消す。このように「家庭教師一つをセーブ」したソダム氏は、チェギチャギの家庭教師を検索するに至る。ドラマ「イカゲーム2」に出てきたチェギチャギが、いつ学校の遂行評価になるか分からないためだ。

先月SNSに公開され、再生回数が700万回を越えたコメディアン、イ・スジ氏の別名「ドチ(ハリネズミ)ママ」の映像だ。「江南(カンナム)ママ」に代表される親たちの過度な早期教育を風刺したこの映像は、数週間話題となり、多様な議論を呼んでいる。

親たちを過度にパロディした側面もあるが、周辺で接する事例を見れば、動画の内容を決して行き過ぎだと片付けることはできないだろう。知人は世宗市(セジョンシ)に住む公務員だが、子供だけソウルの実家で育てている。ソウルの有名英語幼稚園(乳幼児向け英語私教育機関)に通わせるためだ。良い塾に入ろうと、4歳や5歳の子供に「レベルテスト」の準備をさせるという知人も数人いる。いわゆる「4歳試験」だ。

子供の才能を早く発見して育てるための早期教育自体が悪いわけではない。問題は、現在の韓国の早期教育は子供の才能とは関係なく、入試、あるいは特定職業群のための「早期学習」に偏っていることにある。子どもを英語学者や英語小説家に育てるために、英語幼稚園に通わせる保護者はいないだろう。その大半が、早く学んでおいた英語が入試や就職に役立つことを期待する。昨年、医学部増員のニュースに、塾街に数多くの先行学習クラスができたのも同じ理屈だ。

特定大学や職業群に集中した早期学習は、いざ人材が必要な未来エンジン産業の人材競争力を落としている。入試用暗記や詰込み教育に鍛えられた子供たちが、挑戦精神や創意性などを要する新しい分野に飛び込むことを期待するのは話にならない。スティーブ・ジョブズやイーロン・マスク、ジェンソン・ファンなど、革新をリードした世界的な企業家のうち、早期教育で決まった道を歩んで成功した人はいない。最近、突風を巻き起こした中国生成AIディープシークの若い職員たちも、各自が望む勉強に没頭して、自ら未知の領域を開拓した研究者たちだった。

しかし、親だけを責めることができるだろうか。「私の子供がマーク・ザッカーバーグや羅富麗(ディープシークの開発者)になることを止める親はいないだろう。問題は、韓国でザッカーバーグや羅富麗が出にくいことにある。学校の評価システムは、このような児童生徒たちを適切に評価できず、大学入試は「改革」を叫んでから十数年間足踏み状態だ。起業の失敗は個人破産へとつながり、立ち直りが難しいのが常で、「タダ」の失敗からも分かるように社会と政治が革新を阻害した事例も少なくない。

このような状況を経験したり、目で見たりしてきた親たちは、安全な選択をするしかない。「第2のイ・ソダム氏」になって、子どもを安定的な専門職、名門大学に行く汽車に早く乗せることだ。過度な早期教育を巡り、親のせいにばかりするのが難しい理由だ。

確実なことは、4歳試験のジェイミーたちがいっぱいの社会に、「英才的モーメント」は来ないということだ。パロディ動画を見て、「江南の母親たちが問題だ」と後ろ指を差す前に、なぜ彼らがそのような選択をせざるを得ないのか悩む政府当局者がいることを祈るだけだ。