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実体のないアイデアでできるまで騙す世の中を皮肉

実体のないアイデアでできるまで騙す世の中を皮肉

Posted February. 05, 2025 08:32,   

Updated February. 05, 2025 08:32


米ニューヨークで、「アナ・デルビー」という偽名でドイツ相続女のふりをして巨額の投資を受け、結局獄中生活までした詐欺師のアナ・ソロキン(35)。実際の人物である彼をモチーフにした英国ウェストエンドの初演作「アナエックス」が韓国国内で初めて披露された。

この演劇は、ソロキンからインスピレーションを得た主人公「アナ」と仮想のスタートアップ代表の「アリエル」の物語が柱となっている。アリエルは、有名人や派手な外見を持つ人だけが加入するプライベートデートマッチングアプリを作って、巨額の投資を受けることに成功する。だが、彼は自分の事業を「実現可能だという証拠もない虚像だ」とし、「ただ、人間本性の浅薄さなアイディアに投資した」と自嘲する。その一方で、より高いところへの欲望はいっぱいだ。そんなアリエルの目には、上流階級の相続女アナは完璧なパートナー。アナは自分を愛するアリエルを見て、少しずつ仮面を脱ごうと悩む。しかし、2人が作った虚像は結局破局に至る。

「アナエックス」で先に目につくのは、スマートフォン画面のように飾った舞台だ。2人がソーシャルメディアなどでやり取りするメッセージが映像で表示され、演劇舞台がオンラインとオフラインを行き来するような面白さを感じることができる。ただ、メッセージを英語の原文のまま使ったのは、多くの観客が不便を感じる部分だ。

アナというヒロインにお金が溢れるシリコンバレーの「なるまで騙せ(fake it till you make it)」の精神を象徴する人物アリエルを結びつけたことも興味深い。劇中でアナは、ダミアン・ハースト、ジェフ・クーンズのような現代美術家たちをよく言及する。これらの作家たちの「実体のないアイディア」が美術市場で大きなバブルを作り出す現象は、2人のキャラクターの実存を反映しているようだ。

劇では色々な周辺人物が登場するが、全て2人の俳優が演じる2人劇だ。物語の展開によって役割が随時変わり、2人の俳優はアナとアリエルの時はいつも同じ服を着る。スタートアップ代表のアリエルはスティーブ・ジョブズが思い浮かんでそうだが、巨富の相続女であるアナの素敵な衣装を期待したなら残念だ。ただ、設定上、人々の幻想の中では華やかだが、実体は何もないアナを表現したものであり理解できる。

アナ役は、チェ・ヨンウ、ハン・ジウン、キム・ドヨンが、アリエル役はイ・サンヨプ、イ・ヒョヌ、ウォン・テミンが演じた。「クローザー」、「オールド・ウィキッド・ソング」を演出したキム・ジホ演出の作品。ソウル江西区(カンソグ)のLGアートセンター「U+ステージ」で3月16日まで。


金民 kimmin@donga.com