慶尚北道奉化(キョンサンプクト・ボンファ)で発生した農薬混入事件を捜査してきた警察が、死亡した80代の女性A氏を容疑者として特定し、被疑者死亡で不送致処分の決定を下した。事件発生から77日が経過した。
慶尚北道警察庁は30日、「農薬を入れた水をコーヒーが入った飲料水ボトルに入れた犯人は、最後に農薬を飲んで死亡したA氏」という捜査結果を発表した。警察によると、今年7月15日、奉化郡奉化邑乃城(ネソン)4里の敬老堂で発生した農薬混入事件で、60、70代の4人が当日と翌日、筋肉の硬直、流涎、心停止などの症状を示し、病院に搬送された。彼らは全員、敬老堂の冷蔵庫の飲料水ボトルに入っていたコーヒーを飲んだ後に症状が現れた。3人は回復したが、1人は意識不明だ。
事件発生の3日後、敬老堂の会員のA氏が同様の症状で病院に入院し、治療を受けたが、同月30日に死亡した。警察は、通常すぐに現れるはずの農薬中毒反応が、3日後に症状が発生したことを不審に思った。A氏は先に倒れた4人とはコーヒーを一緒に飲まなかったことが確認された。
警察が捜査チームを編成して捜査した結果、A氏が事件発生の2日前、7月13日午後12時20分ごろから約6分間、敬老堂に1人で出入りしたことが確認された。また、A氏が7月12日午後2時ごろ、敬老堂の居間のコーヒーポットに水を注ぐ様子を目撃したという証言も確保された。このコーヒーポットと流し台の上板からは、被害者の胃洗浄液から出た農薬と同じ成分が検出された。A氏の家の庭と周辺に散布された粒状の農薬からも同じ成分が検出された。
警察は、A氏が普段、敬老堂の会員とよく花札をし、時々口論になったという供述を確保した。敬老堂の副食を分配する際に口論があったという供述もあった。
また、農薬中毒の症状で入院する直前、A氏が家族に自分の貯金を渡したことも明らかになった。警察は、「A氏の具体的な犯行動機を推定できる多数の証拠を確認したが、被疑者が死亡したため、敬老堂会員との問題の真偽を直接確認することができず、犯行動機を断定することができない」とし、「被疑者死亡で事件を終結する予定」と話した。
安東=ミョン・ミンジュン記者 mmj86@donga.com