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自発的孤独の必要

Posted June. 10, 2024 09:03,   

Updated June. 10, 2024 09:03

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「私は世界に背を向けて絵を描く」(アグネス・マーティン)

1912年にカナダで生まれ、米国で活動したアグネス・マーティンは、最も有名な抽象画家に数えられる。04年に亡くなるまでの数十年間、微妙に変奏して描いた水平線と垂直線のグリッドペインティングは、喜び、愛、幸福のような抽象的な感情を捉えた傑作として知られている。

昨年、サザビーズ・ニューヨーク競売でアグネス・マーティンの1961年作「グレーストーンII(GreyStoneII)」は1870万ドル(約257億ウォン)で落札され、話題となった。江陵(カンヌン)ソルオル美術館で韓国での初の個展「アグネス・マーティン:完璧な瞬間」が8月末まで開催される。

ソルオル美術館の展示で上映されるドキュメンタリー映画「世界に背を向けて」で、アグネス・マーティンは語る。「私の人生で最高の瞬間は一人でいた時間でした」作家は数日から数カ月、心を「空っぽ」にしてインスピレーションを待ち、ある程度完璧なイメージが浮び上がれば制作に取り掛かる。これを生涯繰り返した。ニューメキシコにある作家の作業室を訪ねて作業する日常とインタビューを収めた映画を見て、マーティンの作品が贈る思索と瞑想の瞬間は孤独によるものではないかと思った。

今日、私たちは一人でいる時でも一人ではない。携帯電話を通じて随時他人とつながり、誰かの日常を覗き込み、必要かどうかも知らない情報に接する。それによって物理的な実際の世界から切り離され、集中力の方向と強度を調節することが難しくなる。道教や禅仏教の影響を受けたアグネス・マーティンのように、純度の高い没入を日常的に体験することは不可能だ。しかし、気を散らしながら情報を収集し、いたずらに好奇心を満たす習慣にブレーキをかける必要はある。この時、アグネス・マーティンの作品を鑑賞することが役に立つかもしれない。物質性に反するマーティンの絵は、携帯電話のカメラでは完全に収められないためだ。