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[社説]「ジェンソン·ファンの約束」配当だけでは得難い

[社説]「ジェンソン·ファンの約束」配当だけでは得難い

Posted April. 03, 2024 09:06,   

Updated April. 03, 2024 10:33

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昨年下半期(7~12月)に会った金融界の関係者は、余裕資金ができればIBK企業(キオブ)銀行の株式を買うと話した。その理由は「配当」だった。彼は老後資金を比較的安全なところに投資したいが、定期預金の収益率では満足できなかった。それで、「公企業なのでなかなか潰されるはずがなく、年7%程度の配当をきちんと支給する企業銀行の株式を選んだ」と話した。今年、企業銀行の配当額は1株当たり984ウォンで、配当収益率は配当決定日の1週間前の株価の7.3%の水準だ。投資金比税引き前で7.3%の年利を受け取ることができるという意味だ。このように、配当は投資可否を決めるのに、すなわち株主の価値を高めるのに重要な要素となっている。

だが、株主の価値向上に配当よりさらに重要なことがあるということを示した事例が最近あった。「8万電子」を回復した三星(サムスン)電子は、企業の未来価値が株価に直結することを示した。2日、三星電子の時価総額は、約3年ぶりに500兆ウォンを超えた。5万ウォン台前半まで押し出された株価を引き上げたのは、NVIDIAの最高経営者(CEO)ジェンスン・ファンの「ジェンスンが承認した(JENSEN APPROVED)」という署名だった。先月、NVIDIAの年次開発者行事「GTC2024」で、三星が世界で初めて開発した12段の5世代高帯域幅メモリ(HBM)を展示したが、ファンCEOがここに署名したのだ。三星がSKハイニックスに渡したHBMの主導権を取り戻すことができるという期待が形成され、先月20日の1日で株価が5.6%上昇した。さらに、半導体市場の回復傾向が相まって外国人の買いが続き、「80階」(8万ウォン台で株式買収)に閉じ込められていた株主たちには希望の光が降りてきた。

最近終了した今年の定期株主総会のシーズンで、配当をめぐる株主の要求は激しかった。三星物産が代表的だ。シティ・オブ・ロンドンなど行動主義ファンド5社が連合し、三星物産に対し5000億ウォン分の自社株を買い入れ、配当額を会社側の提案規模より70%以上増やすよう要求した。オオカミが群れをなして獲物を噛みちぎるという意味で付けられた「ウルフパック」戦略だった。彼らが要求した株主還元規模は計1兆2364億ウォンで、昨年の会社の余剰キャッシュフローより多い金額だった。票対決で三星物産が圧勝したが、会社の役員らは小口株主の家をいちいち訪ね回りながら、「ファンドの要求どおり株主還元をすれば、投資するお金がなくなる」として反対票を泣訴しなければならなかった。

2013年、米国系ヘッジファンドのエリオットは、米国のデータ管理および保存会社のネットアプリの持分4.3%を買い入れた。フォーチュンが選んだ「働きやすい上位100位企業」に13年連続で名を連ねた会社だった。同年、ネットアプリの成長の勢いは前年比大幅に減速したが、エリオットの要求で自社株の買い入れ規模を16億ドルから30億ドルに増やし、1株当たり15セントの四半期別配当金を新設すると発表した。一方、900人を解雇すると明らかにした。人材に使うお金を株主還元に使うということだった。約1年後、エリオットは多くの持分を処分した。

短期的に株価を上げるのに、配当拡大や自社株買い入れ・焼却などが役に立つのは事実だ。慢性的な「コリアディスカウント」の批判に「バリューアップ」の風を吹き込んだ政府の悩みも理解できる。しかし、結局、重要なのは、企業の根源的価値だ。グローバル技術覇権争いで押されないためには、研究開発(R&D)と施設投資、人材育成が欠かせない。ジェンスン・ファンの約束を取り付けることができるのは、短期的な株価浮揚策ではない。