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大企業の不正を暴いた「特ダネ」記事を誤報にしてしまう世論操作、映画「コメント部隊」

大企業の不正を暴いた「特ダネ」記事を誤報にしてしまう世論操作、映画「コメント部隊」

Posted March. 25, 2024 08:42,   

Updated March. 25, 2024 08:42

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すっきりとした痛快な気分で家に帰ることを望むなら、この映画を選んではならない。映画の題材である「コメント部隊」は、まるで一酸化炭素のようだ。無色や無臭で、肌に刺激もないが、徐々に中毒させて死に導く一酸化炭素のように、コメント部隊は目にも見えず、尻尾を捕まることもない。しかし、徐々に一人を破滅に導く破壊力を持っている。そして目標を達成すれば、忽然とそこになかったかのように消えてしまう。もしかしたら、怪獣が出てくるクリーチャー物や「険しいもの」が出てくるオカルト物よりさらに恐ろしい映画「コメント部隊」が、27日公開される。映画館を出て、鳥肌が立つのかもしれない。私が読みながらうなずいた数多くのコメント、工作ではないと確信できるだろうか。

「コメント部隊」は、大企業を批判する記事を書いて誤報議論に巻き込まれた新聞記者イム・サンジン(ソン・ソクグ)の話で始まる。イム・サンジンは屈指の大企業「マンジョン」が中小企業の技術を奪取したという情報提供を受け、情況を詳しく取材し記事を書く。特ダネを書いたという満足感を抱いて、翌日インターネットを開いてみたイム・サンジンは戸惑う。マンジョンがすぐに、操作されたような釈明写真を出して反撃に出たのだ。さらに、その時刻、オンラインにはマンジョンをかばうコメントが殺到し、イム・サンジンの顔写真と身元を公開して作った侮辱的なミーム(meme=インターネットで流行るコンテンツ)が出回る。彼の記事は事実とは関係なく誤報となり、会社から停職処分を受ける。

無念な気持ちを無理に慰めながら時間を過ごしたある日、イム・サンジンの日常を完全にひっくり返す情報提供が舞い込む。自身をニックネーム「チャッタッカット」で紹介した男は、「私たちは、マンジョンから命令を受けて世論を操作した。記事を誤報に追い込む雰囲気を作った」と打ち明けた。イム・サンジンは、彼の言葉が事実かどうかを追い始める。映画は、国家情報院の世論操作事件を題材にしたチャン・ガンミョン氏の小説「コメント部隊」を脚色した。「誠実な国のアリス」(2015年)で好評を受けたアン・グクジン監督が、脚本と演出を務めた。

俳優のソン・ソクグが、コメント部隊の実体を追う記者イム・サンジン役を演じた。情報提供はどこまでが真実で、どこからが嘘なのかを突き止めようと努力するが、混乱に陥ってしまう姿を実感できるように演じた。観客たちもやはり、自分がイム・サンジンならどんな結論を下したのか考えさせる。22日、ソウル鍾路区(チョンノグ)のカフェで会った彼は、「イム・サンジンは、この時代を生きる人々にとっては鏡のような人物だ」と話した。彼は、「自分がハンドルを握って車を運転していると思ったが、実は車が自然に動いているなら、それは受動的なことでも能動的なことでもない。イム・サンジンは、現代人のそのようなアイロニーを持った人物だ」と付け加えた。現代人は独自の考えと判断力を持っていると思うが、実は巧妙に作られた世論戦争から影響を受けていたのかもしれないという説明だ。

アン・グクジン監督は記者懇談会で、「何かがあるようだが実体は分からないし、ないというにはまた現象があるような、存在を確信しにくいコメント部隊に関する物語だ」としながらも、「映画に出てくるものが、その大半が実話に近いという事実は否定できない」と話した。


崔智善 aurinko@donga.com