
半導体業界の「スーパー乙」と呼ばれるASMLが、オランダの自国政策に反発し、海外移転の可能性を示唆後、首相まで会社首脳部と会ったが、見解の差を縮めることができなかった。世界唯一の極紫外線(EUV)露光装置製造企業であるASMLは、人工知能(AI)半導体関連必須技術を保有し、最近各国が半導体誘致に死活をかけている状況で爆発的な関心を受けている。
ロイター通信とオランダRTLニュースなどによると、6日(現地時間)、ASMLのピーター・ベニンク最高経営者(CEO)は、オランダのマルク・ルッテ首相と会談後、「産業界と政界が必要とするものに関する認識において、『相当な格差(considerable gap)』があることを確認した」とし、「オランダで会社が成長できなければ、成長できるところを数ヵ所探さざるを得ない」と話した。
ただ、ベニンクCEOは、「今すぐ去る計画はない」とし、「内閣とASMLは、大半のテーマについては同意している」と明らかにした。ロイター通信は、「以前の計画を現実化することはひとまず排除したが、今後の成長を巡るイシューの解決には、折り合いをつけなかった」と分析した。
オランダのメディア、NLタイムズによると、政府とASML間の激しい神経戦は、首相面談の直前にも明らかになった。同日午前、ASMLは技術スタートアップ誘致をテーマにカンファレンスを開催したが、参加が予定されていた現職議員6人のうち5人は当日の朝、突然日程を覆した。NLタイムズは、「産業界のために外国人労働者を誘致しようという圧力が大きくなると、政界が不快な気持ちを表わしたものだ」と解釈した。ベニンクCEOはこれに対し、「政界が革新企業誘致および成長にどれほど関心がないかを示している」とし、不快な気配を隠さなかったという。
現地では、ASMLが実際に本社を海外に移すかどうかをめぐって意見が分かれている。インシンアグリセン銀行の首席アナリスト・ヨス・ペルステフは、RTLニュースに対し、「ASMLが工場全体を海外に移したり、外国に新たに投資する可能性は低いと見る」とし、「外国人熟練労働者の確保のために、政界を圧迫するカードだ」と評価した。現在も、新規職員の採用に困難を来たしているASMLが、職員2万3000人を海外に移住させたり、新しい職員を探すのは現実的に不可能だという判断からだ。
一方、ヨーロッパ最大証券取引所であるユーロネクストの元前理事であるジム・テフプリンは、「単に反移民イシューだけでなく、最近オランダは、ASMLの成長にネックとなる政策を展開してきた」とし、「数年間政府は法人所得税を引き上げ、中国向け輸出を制限したことなどを緩和しなければ、海外移転を考慮する可能性が高い」と指摘した。ただ、このような場合、移転が決まっても漸進的に工場を海外に拡張しなければならないため、数年がかかると見通した。
オランダの有力紙ザテレフラフによると、オランダ政府は最近、ASMLを説得するためにタスクフォース(TF)「ベートーベン」チームを立ち上げ、ルッテ首相が直接取り仕切っているほど、この問題に気を遣っている。オランダ議会は昨年の総選挙で、反移民の極右政党が勝利後、外国人熟練労働者に付与していた非課税の恩恵を次第に削減し、留学生数を制限する法案を可決させた。これに対し、職員の40%以上が外国人であるASMLは、数回にわたって懸念を示してきた。
イ・チョンア記者 clearlee@donga.com