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飲酒は減るが「薬」は増加、「中毒」の概念が揺らぐ米国

飲酒は減るが「薬」は増加、「中毒」の概念が揺らぐ米国

Posted February. 06, 2024 08:34,   

Updated February. 06, 2024 08:34

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「『薬』はするけど『酒』はやめたので、私は禁酒(sober)状態です」

米西部アリゾナ州のタクシー運転手で海軍退役軍人のマイク・リードさん(43)は2011年から酒を飲んでいない。酔うたびに暴力を振るっていたリードさんに、知人たちが「また酔っぱらったら縁を切る」と警告したからだ。

代わりにリードさんは別のことを始めた。妹が末期がんで闘病中だった2020年、リードさんは大麻に手を出した。最近では全身麻酔薬であるケタミンを吸入するために病院を訪れた。幻覚効果があるとされるキノコも食べ始めた。それでもリードさんは自分を「禁酒中」と紹介する。酒は飲まないからだ。

米紙ニューヨーク・タイムズは4日、リードさんのように酒は飲まないが幻覚剤を使う人が急増している現象を取り上げ、「中毒」に対する固定観念が根底から揺らいでいると報じた。過去には「節制」という言葉の意味がすべての中毒性物質をやめることを意味していたが、最近では酒だけをやめることを意味するという。一部の麻薬性薬物は、「健康増進剤」として宣伝されている。一部の州が大麻などに関する規制を緩和したことも、このような現象を助長しているとみられている。

米国立薬物乱用研究所(NIDA)によると、22年19~30歳の成人のうち「この1年間で大麻を使用したことがある」という回答は44%で過去最高を記録した。

一方、若年層の飲酒率は20年間減少傾向だ。保健部の調査によると、22年基準で1年前より飲酒率の減少幅が最も大きかった年齢層は21~25歳だった。

このような現象をめぐる議論も盛んだ。「麻薬類に対して全体的に寛容になる社会ムードを懸念する」という意見と、「より大きな中毒を防ぐためにも、比較的危険性の低い中毒は許容しなければならない」という現実論が対立する。

特に現実論を叫ぶ人々は、アヘン系鎮痛剤「オピオイド」、最近米国全土で乱用が深刻な「フェンタニル」のような合成麻薬の有害性を考えると、これより比較的危険性の低い医療用大麻の使用は許可すべきだと主張する。

かつてオピオイド中毒者だったマサチューセッツ州の医師ピーター・グリーンスプーン氏は、「中毒者に完全な禁酒を強制するのは限界がある」と述べ、医療用大麻が中毒治療に効果的だと主張した。

NIDAのノラ・ボルコフ所長も、「過去には、中毒から抜け出す道はすべての中毒物質を完全に断つことだけだと教えられたが、かなり非現実的だ」と同調した。

一方、薬物中毒分野の非営利団体「ヘーゼルデン・ベティフォード」財団のジョセフ・リー代表は、「薬物問題を抱えている人々は、薬物使用に対する賢明な決定を下す能力が最も不足している」と指摘した。そして、薬物類に寛容になる社会のムードが中毒者をより大きな危険に陥れる可能性があると懸念した。


洪禎秀 hong@donga.com