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人間の脳にチップを埋め込んだ最初の事例が公開された。考えるだけでコンピューターやスマートフォンを操作できる時代が現実化する可能性が開かれた。学界では、脳とコンピューターをつなぐ「脳・コンピューターインターフェース(BCI)」開発のマイルストーンになると評価している。
米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO・写真)は29日(現地時間)、自身のソーシャルメディアX(旧ツイッター)に「昨日(28日)、初めて人間がニューラリンクの移植手術を受け、順調に回復している」とし、「スティーブン・ホーキング博士が速記者や競売人よりも速くコミュニケーションできたらと想像してみてほしい」と投稿した。ホーキング氏は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、いわゆる「ルーゲル病」で2018年に死去した世界的な天体物理学者だ。
ニューラリンクは、マスク氏が16年に創業した脳神経科学のスタートアップで、人間の脳に埋め込んで考えを読み取ることができる「脳インプラント」製品を開発している。ニューラリンクは昨年5月、米食品医薬品局(FDA)から脳インプラントに関する臨床試験を承認された。その後、9月から臨床試験の参加者を募集し、約5ヵ月で最初の患者への手術が行われたのだ。
脳インプラント技術は、電極を介して脳の信号を認識する技術だ。脳を構成する神経細胞(ニューロン)は、電気的な信号を通じて腕を動かしたり、臭いをかぐなどの命令を出す。脳の命令により、ニューロンには一種の「パターン」が現れるようになる。ニューラリンクのチップはこのパターンを読み取り、コンピューターに送信する。
コインほどの大きさのニューラリンクのチップには、髪の毛ほど細い64本の糸状の部品があり、この中には計1024個の電極がある。この電極がニューロンの近くで脳のパターンを読み取るのだ。マスク氏のXの投稿によると、最初の移植の結果、脳インプラントはニューロンスパイク(電気的信号)を安定して読み取っているようだ。
ニューラリンクの臨床試験に参加する患者は、脊髄損傷で腕や足を動かすことができない四肢麻痺患者やルーゲル病患者だ。理論的には、脳のパターンを読み取れば、考えるだけでパソコンやスマートフォンを操作することができる。脳の信号を患者が着用するロボット用の腕、足などの装備に伝達すれば、患者が動くこともできる。
ニューラリンクは、今年11人、2025年27人、26年79人に脳インプラントを行う計画だ。今後30年までに2万2千件に実施することが目標だ。マスク氏は、将来的には脳インプラントが視力障害を治療する「レーシック手術」のように一般的な手術になる可能性があると見通した。
ただし、ニューラリンクが動物を対象に実施した脳インプラント実験で、1千頭以上の羊、豚、サルなどが死んだという疑惑があり、安全性に対する懸念の声もある。昨年11月には、4人の米国会議員が、マスク氏が投資家に自社技術の安全性について意図的に隠したかどうかを調査するよう米証券取引委員会(SEC)に要請した。
チェ・ジウォン記者 jwchoi@donga.com