最近、映画館街では黒人の人魚姫の登場について議論が熱い。赤い髪の美しい白人姫。私たちに刻印された姿は、実はディズニーが原作を再解釈して作った1989年のアニメの中のキャラクターだ。ハンス・クリスチャン・アンデルセンが人魚姫の童話を書いたのは1837年、原作には人種が特定されていなかった。
映画「人魚姫」は、主人公の肌色のせいで議論となっているが、約10年前、アンデルセンの故郷デンマークでは人魚姫が男として登場し話題になった。アーティストデュオのエルムグリーンとドラグセットの作品「彼(ゴールド)」(2012年・写真)がまさにその主人公だ。
デンマーク出身のマイケル・エルムグリーンとノルウェー出身のインガー・ドラグセットは、1995年から一緒に作業している。彼らは、固着化した観念に挑戦する作業を続けてきたが、「彼(ゴールド)」は、コペンハーゲンの象徴である人魚姫の銅像を男性バージョンで再解釈して作ったものだ。エドヴァルド・エリクセンが1913年に作った人魚姫像は、世界的な観光名所だが、80センチの高さの小さな銅像であるため、実際に見るとがっかりするという評価が多い。エルムグリーンとドラグセットは、人魚姫像と同じポーズを取った男性の人魚像を高さ2メートルに拡大した後、華やかな黄金色を吹き付けた。ひれの代わりに両足ができたのを見ると、王子との恋に成功したようだ。その代わり、声を失ったせいか、表情は悲しく見える。両足をおとなしく揃えて岩の上に座った裸の男は、伝統的な男性性の表現に完全に反する。男の人魚は、思索に陥ったように静かで、弱くて脆弱に見え、また不便に見える。伝統美術で裸の男は丈夫な体つきを誇り、英雄的な姿勢を取るに決まっている。
イタリアの港町モノポリに建てられた人魚姫の彫刻像も、最近議論に包まれている。今回は、姫の過度に豊満な体つきが問題だった。時代が変わった。人々の好みも変わった。ところがディズニーが植え付けた痩せた美しい白人姫に対する観念は、依然として変わりにくいようだ。