Go to contents

両腕のない画家

Posted February. 02, 2023 07:40,   

Updated February. 02, 2023 07:40

한국어

サラ・ビッフェンは美術史に記録されていない女性画家だ。その代わり多くの自画像を残し、自身を記録した。黒い服を着た絵の中の画家が私たちを見つめている。テーブルの上には絵の具が置かれている。壁にかかったミニチュアの肖像画を描いているようだ。だが、両腕がない。右肩に小さな筆が固定されているだけだ。どういうことか。

ビッフェンは1784年、英サマセットのある農家で、両腕と足がない状態で生まれた。家は貧しく、荷物になりたくないと思い、幼い頃から口で裁縫をし、絵を描くことを身に着けた。13歳の頃、両親は、博覧会やサーカスを開くデュークスという男に娘を預けた。障害を持つ娘が金を稼いで生きていく唯一の方法だと考えたのだ。

ビッフェンは、観客の前で口と肩を使って裁縫し、字を書き、ミニチュアの肖像画を描いた。絵はよく売れたが、得られる金はわずかだった。幸い、彼女の才能を見抜いた豊かな貴族の後援で、16年間の見世物生活を清算し、王立芸術院の画家のもとで絵を正式に学ぶことができた。

成長のスピードは驚くものがあった。1821年、英芸術協会のメダルを受賞し、王室のミニチュアの肖像画も依頼され、ビッフェンは、一朝にして有名になった。この自画像は、ビッフェンの名声が最高潮に達した30代半ばの作品。画家は自分が見せたいイメージを描いた。サーカスの見世物ではなく、画材に囲まれた専門画家の姿だ。残念ながら、春の日は長く続かなかった。1827年に後援者が死亡し、マネージャーが金を使い放たし、ビッフェンは再び貧しくなった。障害を持つ女性に対する偏見も依然としてあった。1850年にビッフェンがこの世を去ると、彼女の名前も作品もすぐに忘れられた。

価値があるものはいつか日の目を見る。時代が偉人を再発見することもある。2022年11月、ビッフェンの芸術的業績にスポットライトを当てる展示会がロンドンで開かれた。画家の死から172年後の初の個展だった。