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権力者のイメージ

Posted September. 29, 2022 08:59,   

Updated September. 29, 2022 08:59

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黄金色のマントを翻しながら、白馬に乗ってアルプスを越えるこのシーン。ナポレオン・ボナパルトを描いた最も有名な肖像画だ。フランスの新古典主義の先駆者ジャック=ルイ・ダヴィッドが描いた。ところが、なにかおかしいのではないだろうか。ナポレオンは本当に、あんな優雅な姿で戦場に出たのだろうか。

ナポレオンは、フランス史上最も出世した軍人であり戦争英雄だ。コルシカ島出身の彼は、16歳で入隊し、20代で将軍になり、30歳で第1大統領の座に就いた。この絵は1800年6月、ナポレオン軍がアルプスを越えて、マレンゴ平原でオーストリア軍に勝利した直後に描かれた。

ダヴィッドは元々、数多くの草案と習作後に肖像画を描いたが、今回は全くそうではなかった。忍耐力のないナポレオンが、画家の前に座ることを拒否したためだ。「外見よりは特徴を表現せよ」と要求した。身体的類似性ではなく、理想化したイメージを描けという意味だった。馬に乗ってアルプスを越えるシーンもナポレオンが選んだ。ダヴィッドは、横が2メートルを越える大きなキャンバスに、以前描いたナポレオンの胸像スケッチを参考にして頭から描き出し、自分の息子をはしごの上に座らせて乗馬のポーズを取らせた。実際は、持久力の強いラバに乗ってアルプスを越えたのが、白馬に置き換えられた。

絵の中の将軍は、素敵な制服と二角帽を着用したまま、白馬に乗ってアルプス山脈を越えている。顔は絵の外の観客を向き、右手は山頂に向かって伸びている。風になびく黄金マントは、白馬を鞭打って催促するかのようだ。空には暗雲が立ち込めて山勢は険しいが、遠くから自分に従う兵士たちが列をなして山に向かっている。彼の道を塞ぐ者は誰もいないようだ。こうして、権力者が見せたい理想化したイメージが完成した。

ナポレオンは、肖像画が気に入ったのか3点を追加注文し、画家は自分の所蔵用まで計5点を製作した。絵が予言になったのだろうか。不可能はないことを証明するかのように、3年後、ナポレオンは自ら皇帝になった。