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厳しい1年を送った人々に

Posted December. 26, 2020 08:43,   

Updated December. 26, 2020 08:43


全てのポップスターの人気がそのまま韓国で適用されるわけではない。ローリングストーンズのようなバンドが代表的だろう。「ビートルズの時代」と共に生き、ビートルズに匹敵するほど多くの人気を得ており、何より現在進行形である同バンドは、公演収益に換算すれば依然として5本の指に入るほどの名声と地位と人気を持っている。しかし、韓国だけは例外だ 韓国でローリングストーンズは有名なバンドであるだけで、そのような国内と海外の温度差のために来韓公演をすることは事実上不可能だ。

ニック・ケイブも、国内と海外の温度差を克明に示すアーティストだ。今、ニック・ケイブという名前を見て馴染みのない人々の数がもっと多いだろう。豪州出身のニック・ケイブは、自分のバンド「バッドシーズ(悪い種子たち)」とともに海外の様々な音楽フェスティバルの舞台にヘッドライナーとして立ち、母国で勲章をもらうほど地位が高いが、韓国では中型公演会場もすべて埋めることができないほど認知度が低い。

これは彼の音楽のためでもある。活動初期、パンクとブルースを基盤にした急進的な音楽を聞かせた彼には、いつも「狂気」という言葉が付きまとった。時には騒音のように聞こえることもある彼の音楽が、「韓国人が好むポップソング」リストに載ることはなかった。そんな彼も年を取ってから少しずつ音楽のスタイルが変わってきた。「今は戻ってきて鏡の前に立った」どら息子のように、バラードの比重が増え、低い声でムードを作るケースが多くなった。しかし、そのバラードさえ尋常ではなく、不惑の年に発表したアルバムのタイトルは「殺人バラード」だった。彼のバラードに「血の鮮やかな美しさ」という表現を用いたりもした。簡単に親しくなるのは難しいバラードだった。

そんな彼のバラードの中で、最も親しみのある音楽は「Into My Arms」だろう。映画「アバウト・タイム~愛おしい時間について~」に挿入され、ロマンをたっぷり伝えたこの歌は私の胸の中に来ることを願う対象に捧げる切ない恋歌だ。この歌を、ニック・ケイブは今年6月、英ロンドンのとある宮殿で再び歌った。アレクサンドラ・パレスで、ニック・ケイブはピアノ一台と共に中央に座った。観客は一人もいなかった。80分以上ピアノを弾きながら歌った22曲の歌は、「Idiot Prayer」というタイトルのアルバムと映像で公開された。

「Idiot Prayer」は、新型コロナによって作られたアルバムだ。昨年、17番目のアルバムを発表した彼は、予定通りなら今年、ワールドツアーを回らなければならなかった。しかし、「新型コロナ」で全ての活動が中止となると、彼はピアノと自分の声だけで空間を埋める選択をした。ニック・ケイブの気持ちをすべて推し量ることは難しいが、「Idiot Prayer」というアルバムのタイトルからその意味がかすかに推測できる。2017年に事故で息子を亡くしたこともある彼は、新型コロナで愛する人を亡くした人々と共に、厳しい1年を送った世界のために歌い、祈る。だから、「Into My Arms」はもっと切実に聞こえる。単なる恋歌ではなく、世界の皆さんへの慰めであり祈りである。