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「あなたたちから悪臭がする」米国のある白人の怒り

「あなたたちから悪臭がする」米国のある白人の怒り

Posted December. 01, 2020 08:41,   

Updated December. 01, 2020 08:41

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米大統領選が終盤に突き進んだ10月末、ペンシルバニア州郊外のある選挙集会の会場で、トランプ大統領の支持者Aさんに会った。60代白人男性のAさんは、明け方に来て、ボランティアをしていた。トランプ氏の自慢をしばらくした彼に、「選挙で負けた場合、受け入れるのか」と尋ねた。彼は「当然だ。ただし選挙が公正でなければならない」と答えた。妙な余韻が残った。

先日Aさんに再び連絡をした。果たして敗北を認めるのか気になった。すぐに返事がきた。「あなたは米国の憲法を知らないようだが、開票詐欺の根拠はとても多い」とし、ニュースのリンクをいくつか送ってきた。そして、「来年1月20日にトランプ氏は2度目の任期を始める。約束する!」と言った。彼が送った記事を確認してみた。「郵便投票は詐欺だ」、「偽の投票用紙が混ざっている」といった馴染みの内容だった。

Aさんに「あなたが送ったのは疑惑にすぎず証拠ではないのではないか」と問い返した。親切だったAさんがこの時から態度が荒っぽくなった。そして、「あなたは今、左派の論理に陥っている。CNNを見るのをやめなさい」と言って、トランプ氏の最側近で詐欺の疑いで起訴されたスティーブ・バノン氏の動画を添付した。私が「あなたの怒りは理解する。それでも少なくとも人種差別が悪いということは同意するのでないか」と言ったところ、「韓国はどれほどの多文化社会なのか。私を教えようとするな。全世界のメディアは皆死んだ。悪臭がする」と激しい反発が返ってきた。

 

すべてのトランプ支持者がAさんのようではないだろう。しかし無視できない数が、選挙1ヵ月が経った今でも大統領選の敗北を否定している。トランプ氏に投票した米国人は7400万人にのぼる。そのうち「結果を受け入れなければならない」と考えている人は3割にすぎないという。各種陰謀説と非科学的な信頼は、このような不服心理をさらに強固にしている。「医者が新型コロナの死者数を膨らませた」、「左派の会社が作った開票機が数百万票を捏造した」という話が今も事実のように流布する。

世界化で米国の低学歴・低所得の白人が雇用を失い、共同体が崩壊する被害を受けたということは否定できない。これは、最近映画化されて有名になった「ヒルビリー・エレジー」のような本にも詳しく描写されている。長く放置された彼らの疎外感を慰めたのは、ワシントンの政治家ではなく「政治新人」のトランプ氏だった。ロックスターを彷彿とさせる途方もないファンダムの前で、彼の荒っぽい性格や発言、さらに犯罪疑惑すら特に問題にはならなかった。支持者への絶対的な信頼は、ライバルへの怒り、メディア不信につながり、大統領選敗北に直面しても初めて結果を受け入れないという破壊的な形態に進化した。

 

Aさんとは話を続けることはできなかった。米国がなぜこうなったのか、最近よく出るこの言葉をまた口にした。しかし一方で、トランプ氏のファンが敗北を否定してはいけないように彼ら7400万人の存在を無視してもならないという考えが頭をかすめた。彼らを理解することができなければ、米国全体を理解することができないということは明らかなためだ。無力で疎外された者の怒りを包摂することができないことが深い分裂の種になったということを米国は学んでいる。他人事ではない。


兪載東 jarrett@donga.com