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アングルの最後の女性肖像画

Posted December. 05, 2019 09:20,   

Updated December. 05, 2019 09:20

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青いドレスを着た女性の肖像画だ。肩が丸見えの華やかなイブニングドレス、ゴールドとダイヤモンド、真珠などで飾られた高価な装身具、気品のある黒い髪、金色の椅子の上にかけておいた金刺繍のショールなど、一目で見てもパーティーや舞踏会場に行く姿のようだ。ところが、女性の表情は何となく憂鬱に見える。いったい彼女は誰で、どうしてこんなに疲れて無気力に見えるのか?

19世紀のフランスの画家ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングルが描いたこの絵の中のモデルは、ポーリン・ブログルだ。「ブログリ姫」と呼ばれたフランスの貴族女性で、1845年、後程フランス首相まで歴任したアルベール・ブログリと結婚した。絵は夫が注文したもので、完成当時ポーリンは28歳だった。聡明で知的なうえ、優れた美貌まで備えた彼女は、貴族のパーティでいつも注目されたが、恥ずかしがり屋で大変だった。画家の前に立つことも、彼女には大変なことだったのだろう。モデルの居心地が悪いため、画家も楽なはずがない。アングルは50年以上も理想的な女性のヌード画と肖像画を描いてきたが、それでもポーリンの肖像だけは容易ではなかった。友人に書いた手紙の中で、あまりにも大変なので、これが最後の女性の肖像になるだろうと訴えたのだ。実際、この絵は、アングルが描いた自分の妻を除く最後の女性の肖像画だ。アングルは、姫を描くために、少なくとも10枚以上もスケッチをした。ヌードの人体を先に描いた後、その上に服や装飾を塗る方法で作業したが、もちろんこの時は、職業モデルを呼んだ。ようやく完成した絵だが、写真のように精巧な描写、完璧な比例と構図、理想美のための人体の歪みなど、新古典主義様式の特徴をそのまま示している。

モデルの疲れて憂鬱な表情は、80歳を超えた高齢画家の不吉な予感だったのだろうか。絵が完成してから間もなく、ポーリンは肺結核にかかり、7年後に35歳で息を引き取った。アルベールは79歳まで生きたが、再婚しなかった。生涯妻を恋しがりながら、この肖像画を死ぬまで大事にした。