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「女性なので…ピアニストの夢をあきらめました」

「女性なので…ピアニストの夢をあきらめました」

Posted November. 02, 2019 08:11,   

Updated November. 02, 2019 08:11

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ピアノを演奏する少女は多いが少年は少ない。しかし少年よりも少ない数の少女がプロのピアニストになる。

昔ならなおさらだ。ピアノの前の少女はどうなったのだろうか。

著者もその一人だった。幼い頃、父親に連れられたジャズトリオの演奏に魅了され、ピアニストを夢見た。友人も彼女のピアノの腕前に魅了された。

彼女に音楽の情熱を与えたのは「即興演奏」だった。流行歌の楽譜を思いのままに変奏するのが楽しかった。ジャズのライブバンドに見ても、女性のピアニストはいなかった。

19歳の時、コンクールでショパンの練習曲「革命」を失敗し、彼女は音楽学士の学位だけを取得し、進学を断念した。出版編集者として働いた彼女が再びピアノを思い出すきっかけになったのは、高校卒業20周年の同窓会だった。何人もの友人が「まだピアノを弾いているのか」と尋ね、彼女のすばらしい演奏を振り返った。

著者がピアニストになっていたなら、優れた作家一人が消えるところだった。「バッハの2声のインヴェンションには調和と合意がある。ジョン・マッケンロー(コートの悪童)よりは、ビョルン・ボルグに近い」。「女の子の派閥メンバーでもなかったので、社交界のスイスだった」といったセンスあふれる文章が一つの証拠だ。挑発と小心さが交錯する内面が時折、鋭い文章と共に共感を引き出す。

「女性とピアノについての社会学」としても、この本は意味がある。モーツァルトの姉のアンナはすばらしいピアニストだったが、成長して、父親が「成人の女性が大衆の前で公演することは恥」と考えて活動を禁じた。シューマンの妻で、有名なコンサートピアニストだったクララも、娘たちにコンサートの代わりに教習活動を勧めた。

1850年から60年間、英国の人口が3分の2増加する間にピアノの生産は3倍に増えた。ピアノ演奏は女性の必須教養と見なされた。「エマ」をはじめジェーン・オースティンの作品の主人公もそうだ。彼らが持つ「完璧な結婚への幻想」は著者をうんざりさせる。

同窓会で自分を振り返った著者は、新しい試みに出る。幼い頃、怖かった祖母アリスの人生を調べることだ。アリスは、スコットランド声楽大会で大賞を受賞した声楽家だったが、ピアノが上手で、大きな教会で聖歌隊の指揮者として活動した。しかし、労働階級出身の少女が音楽的才能で成功する話は、当代の「成功神話」にはなかった。結婚はアリスの人生を孤立した領域に閉じ込めた。「私も祖母も危機への対応は可能性を開くのではなく閉ざすことだった」

今、著者はアマチュアのジャズ・アンサンブルの一員だ。希望だった「自分の声を持つ音楽家」になったのだ。漫画「ピーナッツ」に出てくる「シュローダー」のように音楽への没入は、彼女の幸福に重要な成分となった。

「遠回りした。私が10代の頃の技術を持つことや、頻繁に演奏することはないかもしれない。しかし、常に自分をピアニストと考えるだろう」


ユ・ユンジョン記者 gustav@donga.com