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ストーリーの力比べ

Posted October. 03, 2018 08:50,   

Updated October. 03, 2018 08:50

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複数のストーリーも力比べをする。正しい方が勝てば大変嬉しいはずだろうが、正しい方がいつも勝者になるわけではない。力比べの実像を鋭く指摘した映画俳優がいる。今日公開される映画「ヴェノム」の出演者でもある、パキスタン系英国俳優兼ラッパーのリズ・アーメッドが彼だ。

彼は昨年3月初め、英議会議事堂で「多様性」に関するスピーチをする際、聴衆にこう語った。「皆さんは、イスラム国家を宣伝する映像を見たことがありますか?アクション映画のように作られています。ところが、それに立ち向かうストーリーはどこにあるのでしょうか?」。過激主義性向のイスラム国家がアクション映画のように感性を刺激するストーリーで若者たちを誘惑しているが、それに対抗するストーリーのない英社会の問題点を指摘した言葉だった。彼が注目したのはマスメディアの中のストーリーだった。

「皆さんが文化の中に反映された皆さんの姿を見ることに慣れているなら、そうでない人たちにはそれがいかに重要であるかをしばらく考えてみてはどうでしょうか。雑誌や広告板、テレビ、映画にあなたの姿が反映されるということは、あなたが重要であり、国家的ストーリーの一部であり、価値があることを意味します」

これは英国人でありながら、人種や宗教が違うという理由でストーリーから排除されたり常套化されて傷つけられた人々を社会が受け入れる必要があるという話だった。そうしないと、若者たちを欧米の帝国主義からイスラムを守護する「一種のジェームズ・ボンド」として提示する過激主義に、彼らを失うリスクがあると主張とした。彼を見るのに、英国はストーリーの戦いで負けていた。

彼はその戦いで勝利するためには、人種や宗教が異なっても、すべての市民を受け入れ、彼らが国の物語の一部になるようにしなければならないと語った。すべて正しい言葉である。アーメッドの言葉は、英国だけでなく、多文化時代を生きているのに、それを無視して自己中心的な昔のストーリーだけを繰り返して生産する国にも該当する。韓国も例外だろうか。私たちのメディアはどのようなストーリーを作っているのだろうか。

文学評論家・全北大学教授