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「お母さん、海外旅行に行かせてあげから」 親孝行娘キム・ソヒは約束を守った

「お母さん、海外旅行に行かせてあげから」 親孝行娘キム・ソヒは約束を守った

Posted August. 19, 2016 07:49,   

Updated August. 19, 2016 07:50

「早乙女や子の泣くかたへ植えてゆく」(日本俳句詩人の小林一茶)

残り時間はちょうど4秒。娘は2対4でリードされていた。母親は両目をつぶって祈りを捧げた。祈祷する母親は、両手で顔を覆っていたため、娘が頭部攻撃を決めて6対4で試合を覆す場面を見逃した。周囲にいた韓国人観客が「わー」と歓声をあげると、ようやく目を開けて一緒に喜んだ。母親の目元はすでに潤っていた。母親の娘は、この一撃でリオデジャネイロ五輪のテコンドー女子49キロ級準々決勝を勝ち抜いた。

忠清北道堤川(チュンチョンブクト・チェチョン)で軽食店を営みながら娘を支えているキム・ソヒの母、パク・ヒョンスクさん(51)は、今回リオを訪問したのが生まれて初めての海外旅行だ。3年間も反対し続けた娘の運動を認めてあげた日、「絶対海外旅行させてやるから」と大口を叩いた娘は、その約束を守ったのだ。リオに向かう途中、フランス・パリでも一晩泊まった。夫はフランス料理が口に合わないと言ってフライドポテトを何個かつまむだけだったが、パクさんは何でも美味しく食べた。母の口に合わないとどうしようと娘が気にするかもしれないと思ったからだ。

娘の試合がある日も、わざと2階の観客席の一番暗いところに座った。パクさんは、「ひょっとして私たちを見て失敗したりしないかと心配になって、この席を決めた。娘が出る試合は数えきれないほど見て来たけど、今回は胸が高鳴ってどうしようもない」と話した。準決勝が始まると、パクさんの手にあった太極(テグク)旗が靡き始めた。応援しているのか手が震えているためか、区別がつかなかった。

準決勝では第3ラウンドまで0-0の拮抗した試合展開となると、パクさんは「頭を気を付けて」「早く逃げないと」などと叫んで応援した。娘よりも緊張していたパクさんは、試合が延長戦に突入すると、今度は太極旗で目を覆った。テコンドーでは延長戦に入ると1ポイントでも先に得点した選手が勝利となる。パクさんが立ち上がって再び旗を振り始めたのは、延長終了36秒前のことだった。娘は、今度も勝利を飾り、銀メダルを確保した。

決勝で、パクさんは応援団長に成りきった。ブラジル観客の間から「キム、キム、キム」という応援のコールが上がると、パクさんは「ソヒ、ソヒ、ソヒ」と叫んで掛け声を変えた。パクさんが大声で「キムソヒ、ファイティング」と叫ぶと、ブラジル人たちも「ファイティング」で受けてくれた。

パクさんは、「ソヒがリオに来る前、パパと一緒に釣りに行きたい誘ったので、一日休みを取ったことがある。ところが、その日、一日中雨が降り、結局竿を伸ばすことすらできなかった。五輪出場前にお母さん、お父さんと一緒に時間を過ごしたくて言い出したことが結局思うようにいかなかったので、ずっと気になっていた。韓国に帰ったら、真っ先に釣りに連れて行かないと」と話した。



리우데자네이루=황규인 リオデジャネイロ=ファン・ギュイン記者 기자