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もし柳賢振が第7戦に登板していれば…

Posted October. 31, 2013 03:55,   

孫子の兵法には4つのタイプの将軍が登場する。勇将は智将に勝てず、智将は徳将より一枚下で、徳将は福将にはどうにもならないと書かれている。福将は、まさに運将のことだ。今年プロ野球の韓国シリーズ第2戦で、斗山(トゥサン)の金鎮旭(キム・ジンウク)監督は、「アンタッチャブル運将」だった。

先のイニングで3度も失点の危機を逃れた斗山は、8回裏守備の無死1、2累に三星(サムスン)に同点を許し1−1となった。しかし、そこまでだった。斗山は逆転を許さず、勝負を延長に持ち込んだ。斗山は10回裏の1死満塁と11回裏の1死1、3累の瀬戸際も耐え抜いた。

「ミラクル斗山」の最後はオ・ジェイルが飾った。延長13回表、三星の特級抑え、呉昇桓(オ・スンファン)の時速151キロの初級を引っ張って逆転ソロ弾を放った。気勢が上った斗山打線は、その後3点を追加し、事実上勝敗を分けた。

幸運と不運は、コインの両面に似ている。「危機の後に機会」という球界の俗説とも通じる話だ。来年の米国進出を打診している呉昇桓は、敗戦投手の不名誉を被ったものの、この日、大リーグのスカウトたちに強烈な印象を与えた。抑え投手が4イニング53球を投げ、降板される直前までスライダーの球速が145キロまで出るなど、球威は少しも衰えていなかった。とくに斗山打者6人を連続三進で仕留める場面は圧巻だった。

最近、米国メディアは「不世出のクローザー」マリアノ・リベラが引退したニューヨーク・ヤンキースが呉昇桓に関心を示している」という記事を相次いで掲載し、結果が注目されている。

一方、柳賢振(リュ・ヒョンジン=ロサンゼルス・ドジャース)がセントルイス・カージナルスとのナショナルリーグ優勝決定シリーズ第7戦に登板できるチャンスを逃したことは気の毒だが、「かえって良かったのかも」と言うファンもいる。仮にドジャースが第6戦を勝って、最終戦の第7戦のバトンが柳賢振に渡されたとして、新人として耐え難い重いプレッシャーのため第3戦のような好投(7イニング無失点)ができたとは限らない、という老婆心からだろう。

もしも敗戦投手になってワールドシリーズ進出失敗を怨む声が自身に集中したなら、果たして柳賢振は、29日の帰国インタビューのように明るい顔で「今シーズンの自分の成績は99点」だと言えただろうか。第6戦で7失点して崩れたエース、クレイトン・カーショーは、「自分のために負けた。ワールドシリーズ優勝がなければ、ポストシーズン進出も最下位と何ら変わらない」と自身を咎めた。

災いが福となることも、福が災いにもなる「転禍為福」の例は、私たちの周辺で多く見かける。とくに野球は、打ち損ねた打球が安打となり、ボールの中心を打った打球が野手正面に飛んでアウトになることも多々ある。その意味で、コーチ陣のミスで斗山の先発投手、ユ・ヒグァンが韓国シリーズ第3戦で早期降板されことが、シリーズの結果にどういう影響を与えるのか気になる。

交通事故で入院したことが、偶然にもがんの早期発見につながり、完治したケースもある。米国の製薬会社ファイザーは、心血関係疾患治療剤の開発に莫大な投資をしたが、副作用があることが分かり、慌て果てた。ところが、その副作用物質は、現在世界的に年間2兆ウォン分以上が売れている勃起不全治療剤バイアグラが生まれる決定的なきっかけになった。

世の中のことは塞翁が馬、好事魔多しである。馬小屋を飛び出した雄馬が見事な雌馬を連れて帰ることもある。良いことが訪れるためには、多くの波風に当たって当然だ。幸せが不幸の終りでないように、不幸も決して幸せの終りではない。